米国市場では14か月ぶりにヒンデンブルグオーメンが点灯することとなりましたが、その直後にパウエル議長のメディアインタビューが公開され、その後に相場が大きく下落し10年債金利も上昇するという場面があり、市場参加者を震撼させる事態となりました。

週末はハイテク株に買戻しが入ったことから一旦、大幅下落は落ち着いたように見えますが、これで相場が収まったかどうかはまだ不明で3月は引き続き緊張感の高い相場が継続しそうな雰囲気になってきました。

そもそもヒンデンブルグオーメンとは

Photo ZeroHedge

このヒンデンブルグオーメンという指標は米国相場では結構よく耳にするものですが、ヒンデンブルグオーメンとは2014年に54歳で交通事故死した盲目の数学者、ジム・ミーカが考案したものでそれほど古くから言われているものではありません。

1937年に米国で起きたヒンデンブルク号という名称の飛行船の爆発事故にちなんでつけられた不吉な予兆を示す言葉というのがこの内容で、点灯から1か月以内に5%以上の暴落が起きる可能性がきわめて高いというものです。

ヒンデンブルグオーメンの点灯条件は4つ設定されています。

  1. ニューヨーク証券取引所(NYSE)での52週高値更新銘柄と52週安値更新銘柄の数が共にその日の値上がり・値下がり銘柄合計数の2.2%以上
  2. NYSE総合指数の値が50営業日前を上回っている
  3. 短期的な騰勢を示すマクラレンオシレーターの値がマイナス
  4. 52週高値更新銘柄数が52週安値更新銘柄数の2倍を超えない

これが点灯しますと、株価が5%以上下落する可能性はほぼ77%となり、パニック売りが加速する可能性が41%、株式市場が重大なクラッシュを引き起こす可能性が24%あると言われています。

ヒンデンブルグオーメンの的中率は2018年のトランプ政権時には10回も点灯しており、同年2月のVIXショックで相場が大きく下落した時やさらに同じ年の10月の大暴落の前にもしっかり点灯して相場の暴落を示唆していたことがわかります。

2019年は2回ほどの点灯ですがいずれもトランプ米大統領が対中追加関税の発動を表明して株価が下落したときにもワークしていたことになります。

市場がもっとも気にしているのが2020年1月27日に点灯後、NYダウは2月初旬に史上最高値をつけたあと新型コロナウイルス感染拡大で月内に5%以上の下落となり、さらに3月16日にさらなる大暴落することとなりした。

この記憶が新しい状況の市場としては多くの参加者がここから先の相場の動きに非常にナーバスになりつつあるといえます。

パウエルのインタビューで相場大幅下落

こうした注意指標が点灯した折も折、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)主催のイベント「ジョブズ・サミット」のインタビューに登場したパウエルFRB議長は、「最大雇用と長期的に平均2%のインフレ率を達成するという目標には、まだ遠い道のりにある」と述べたまではよかったのですが、雇用とインフレの目標に向けてさらなる著しい進展があるまでは超低金利を維持し、大規模な資産買い入れを継続する考えを表明したものの、足元の米10年債金利の上昇に対して明確な対策、施策をうつことを明言しなかったことから猛烈な失望売りを誘うことになり、米株三指数は大幅下落、10年債金利は再度上昇する相場となってしまいました。

米国市場は催促相場の様相

パウエル議長は2018年にも市場の期待と正反対の発言をして株式相場を大きく下げることとなり前言撤回を余儀なくされた負の実績もあり、市場との対話に失敗しやすい人物という評価も高いわけですが、パウエルインタビューを受けた相場の下落はあきらかに市場がパウエルに適切な施策を打ち出すことを催促している感があり、とくに債券相場ではどこまで金利が上昇すればFRBが慌てだすのかを市場参加者が挑戦的に試している感も否めません。

こうなると一旦下落が止まった相場がさらに下落に向けて動き出す可能性も捨てきれず、ここからの3月相場には目が離せない状況が続きそうです。

ヒンデンブルグオーメンが直近で点灯したとはいえ、米国は追加経済対策を実施していくことが決定しているだけにここからいきなり大暴落が起きるとは俄には思えませんが、相場の嫌な雰囲気は依然強く残っているのが現状で、引き続き注意が必要な状況です。