トランプ来日の影で飛び出した米商務省の相殺関税爆弾

国内ではトランプ来日でゴルフだ相撲完全だ炉端焼きだと大騒ぎになりましたが、その陰に隠れる形で米国商務省は突如として自国通貨を低い水準に誘導している国の製品に対し関税をかけるルールを検討していることを明らかにしたことから、これは中国のみならず日本も対象にしようとしているのではないかとの憶測が高まりつつあります。トランプ大統領は参議院選挙が終了した後で日米の貿易交渉の決着をつけると漏らしていますので、国内報道でもほとんど注目されていませんが、同時期に来日中のライトハイザーUSTR代表から交渉相手の茂木大臣にすでに恫喝がかけられている可能性は十分にありそうで、ここから夏までの動きにかなり注意が必要になってきています。

まずは中国、次は日本への履行ではないのか?

現段階ではとこの国の何の輸入品がこの相殺関税の対象になるのかを米国商務省は一切明らかにしていませんが、通貨変動につながる中央銀行の政策は対象にしないと明記しており、中銀の政策により結果的にドル高となるのはやむなしとの一定の理解をしています。ということは中央銀行の政策によって結果的にドル高になるものではなく意図的に通貨安をオペレーションとして行っているもの、また何等かの補助金を輸出業者に提供しているケースがやり玉に上げられる可能性が極めて高くなるものと思われます。

この場合まず中国があげられ、補助金について明確にやめる気配のない中国の当該輸出品をターゲットにしてさらに関税をかけると脅かしに使おうとしている可能性は高そうです。米商務省は政府による資金や物品の提供などを補助金とみなしてきたが、政府による通貨切り下げ行為も補助金に含めるとしていますから、米中の関税騒動で中国が作為的に人民元安誘導を行った場合がこれに適用するとみてよいでしょう。

ただ、補助金に関しては日本の自動車もやり玉に上げられる可能性が高い状況です。というのも日本にも自動車輸出をする国内メーカーには莫大な輸出戻し税が適用されており、しかもこの戻し税は10月から消費税率の引き上げから8%が10%になろうとしていて、既に米国からはこれが補助金にあたるとの指摘を受けているという話も伝わってきています。足元では安倍政権は粛々と消費税率を10%に引き上げる意向を崩していませんが、米国政府からこれに関してなんらかの怒りを買うリスクはかなり高そうで、実はもう怒りがライトハイザーからぶちまけられていることもありそうな状況となっているのです。

トランプ来日の影で飛び出した米商務省の相殺関税爆弾
Photo Getty images  https://forbesjapan.com/articles/detail/14531

米商務省といえば中国に対する敵意むき出しのウィルバーロス長官ですが、USTRとの連携性もかなり高いようで、こうした政策の提案は五月雨的に行われているのではなくかなり一貫性をもって持ち出されてきている点に注意しなくてはなりません。トランプ発言だけ見ていますと思い付きで動いているように見える政策はかなり戦略的に練られているのが実情です。

やがて円高にすることで解決するしかない可能性も

ドル円相場の歴史はとにかく米国の自国通貨安という政治的な動きに翻弄された動きであることは多くの方が認識されていることと思いますが、自動車輸出の台数制限などをしても実利的でないことは80年代に既に実証されており、しかもその担当者だったのがライトハイザーですから、同じような要求を突きつけるのではなくより実利的な交渉を勝ち取ろうとする危険性はかなり高いといえます。まずは自動車とひきかえに農産物の完全自由化を強要してくることが考えられますし、日本政府が自動車メーカーに支給している輸出戻し税についてもケチをつけられるリスクは相当高そうで交渉先延ばしを喜んでいる場合ではないのが年実の状況ではないかと思われます。

最終的には米国は日本に対しより円高を求めてくるのも時間の問題と思われますが、まずその布石として日米の通商合意に為替条項を入れて締結することはもはや逃げられない条件となりつつあるようで、こちらも協約内容が詳らかになるタイミングでひどく円高が進む大きな材料になりそうです。

物価を加味した実質実行レートでいいますとドル円は1980年代中盤の1ドル200円から250円あたりのレートに近い円安状況にあるわけですから、1ドル100円以下を志向するよう求められても仕方ないところにあることを忘れてはなりません。

米国の最終的狙いはプラザ合意2.0

米国は対中交渉でも結局成果がでくなれば最後は為替レートで攻め上げてドル安を示現させることで不公平感を解消することを狙っているのは間違いないとされています。実際トランプ政権がはじまった直後から専門家を集めてプラザ合意2.0のような条約締結ができないかを真剣に検討していると言われており、2020年にトランプが大統領選挙で再選されればその動きが顕在化してくることは確実な情勢といえます。

世界的に見てもっとも為替操作国であるのはだれあろう米国ですが、すでに日本円にして2400兆円を超える負債を抱えた国がまじめに返済して財政再建をしていくとは到底思えない状況で、ドル安は国家的な目標になりつつあることがわかります。

なんでも言うことをききやすい日本が中国との交渉のひな型的存在で言うことをきかされることになるのはもはや当たり前となりつつありますから、どれだけ厳しい条件を米国に突き付けられたのかがわかる8月が非常に恐ろしい時間帯になりつつあります。