ドイツ銀行株が5月に入ってから連日のように最安値を突き進むという不気味な状況が継続中です。 この銀行既に危ない危ないと言われだしてから数年以上経過していますが、今のところ破綻する気配はないものの、増資をするという話がメディアで報道されて株を保有する投資家から猛反対を食らう状況となっています。米国市場に上場されている株価は6ドル台でここ5年をみても最低のレベルに下がり始めています。一体何が起きているのでしょうか。

Data Bloomberg https://www.bloomberg.co.jp/quote/DBK:GR

負債総額は260兆円超か

ドイツ銀行でよく出る話は7500兆円にも及ぶデリバティブやCDSの危機と言われますが、デリバティブだからすぐに危ないというわけではありませんし、よく理解していないですし7500兆円が全て負債というわけではありません。

ただこの巨額のデリバティブがもっとも問題なのはいわゆる簿外債務の扱いになっていることから実態が決算報告書を見ただけではわからないことがいたずらにこの銀行の経営状態を不安にさせている原因ともいえるのです。世界の株式、債券市場の時価総額は常に変動しますがおよそ100兆ドル以上があるとすれば、デリバティブの残高は1500兆ドルを超えるとされており、世界的にみてもレバレッジをかけすぎたデリバティブ市場は肥大化しすぎています。なかでもドイツ銀行はこの10年以上にわたってこうしたビジネスを積極的に取り込んでしまい、巨額の扱い量を誇ることになってしまったのです。

したがって損失規模も正確にはわかりませんが、ほぼ260兆円ほどの損失があってこれを飛ばしで処理し続けているのではないかというのが業界内での見方となっているようです。今回資本増強のために増資を行わなければならないというのはその損失補填資金が枯渇しはじめているからではないかと疑われるのは当然の話で、ドイツ銀行株を保有する投資家が猛烈に反対しているのはそこが問題だからとも言われています。

喉元過ぎてほかの米系銀行もかなりデリバティブは巨額に

デリバティブを巡ってはドイツ銀行の話ばかりが取りざたされている感がありますが、実はリーマンショックで九死に一生を得た米系のグループはシティ、JPモルガン、ゴールドマンサックスともに50兆ドルを超えるデリバティブの残高があり、実はドイツ銀行とあまり変わらないレベルを今も維持していると言われます。

リーマンブラザーズの破綻の時も結局デリバティブ残のおおきさが大きな原因になったわけですが、11年近く経過するとまた米系銀行のデリバティブ額はさらに巨大になっており、とくにこうした銀行の主軸となっているのがすでにリーマン破綻すら記憶にないミレニアル世代であることを考えても同じ問題が繰り返される危険性はかなり高いといえそうです。

規模が大きすぎて破綻もさせられない

ドイツ銀行に関してはとにかく規模が大きくなりすぎていまさら破綻させるわけにもいかず、ドイツ国内のコメルツ銀行との統合やスイスのUBSとの統合も検討されましたが、結局うまくいっていないのが実情でこの先どうやってこの銀行の問題を解決させていくのかが大きな焦点です。あまりのんびりしていては次の相場の暴落に巻き込まれて二次災害に陥る可能性もありますし、そもそも発行しているCDSも巨額であることから市場で問題が起こればドイツ銀行自体が相場暴落の引き金になりかねないだけに非常にクリティカルな状況に陥っていることがわかります。

メルケル首相はすでに与党キリスト教民主同盟(CDU)の党首を辞任していますが、首相職は2021年まで継続することを宣言しています。実はこれもドイツ銀行の処理の問題と深く関係があり、これをなんとかしないと辞めるに辞められないのではないかという憶測が高まってる状況です。危ない危ないと言っているうちは大丈夫という話もありますが、危険が確認されていてもいきなり問題が顕在化するグレーリノという見方もあってここからのドイツ銀行の問題の解決方向が非常に注目されるところです。