6月第一週目はトランプ大統領のメキシコを巡るツイートやパウエル議長の会合での挨拶の内容に大きく市場が反応する一週間となり株も為替も揺れ動く週となりましたが終わってみれば米株は爆謄状態で、株式市場全体が利下げの催促相場に陥っていたことが明確になりました。
週末に発表された米国の5月の雇用統計は非農業部門雇用者数が前月比7万5000人増と予想の前月比18万5000人増を大きく下回ったほか、物価上昇の先行指数として注目される平均時給は前月比0.2%上昇/前年比3.1%上昇と予想を下回ったことからドル円も一時的に107円に下落しましたが、下値はかなり堅く結局108円台に戻して週の取引を終えています。

Data Tradingview

攻撃は全て関税のタリフマン・トランプ

米国にとって不都合なことがあるとなんでも関税を持ち出して恫喝をかけるようになったトランプの自称タリフマン攻撃ですが、メキシコに対する関税も相場は突然のツイートでその内容が知らされたことから実に迷惑で思わぬところで相場が反転するなど頭にきているトレーダーが世界中で相当多く存在しているのではないかと思われる状況です。
しかしこのトランプの一連の発言を見ていますと、単なる思い付きだけで行っているわけでもないようで実際に交渉する実務グループとのコンシステンシーもそれなりに取れ始めていることが窺えるようになってきています。足元で彼が延々とやっていることは大統領就任前から口にしていた公約であり、多少やり口やそのレベルには変化があるように思われますが、一貫してぶれずにその公約を果たし続けようとしていることが改めて認識させられるだけに、今後もこの関税攻撃は継続していくものと思われ、株も為替もまだまだその影響を受けそうな状況です。

株価だけみて政策判断が市場に露見のパウエル議長

Photo Bloomberg https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-06-05/PSLXSD6JTSEG01

一方、トランプ発言で大きく下落した米株を受け、パウエル議長がシカゴの会合あいさつで、FRBは貿易の展開による影響を綿密に監視し、景気拡大を持続されるために適切な行動をとるとし、利下げも辞さない構えを表明したことから株式市場が好感して大きく株の値が戻る展開となり週末金曜日のNY市場では雇用統計の結果を受けて先物が瞬間的に値を消す動きになったものの、上昇は止まらず一時的に2万6000ドルを回復するほどの爆謄状態となり、前週の下げが嘘のように値を戻しています。結局のところ市場が利下げの早期実現を要求する催促相場に陥っていたことは明白で、それにパウエルがそれに応えてしまったことからFRBも単純に株価を見ながら政策を決定していることが完全に露見する形となり、これからも事ある毎にこうした催促相場の要求を受けることになりそうな状況となってきました。すでにFRBは完全に利上げのカードを失った形で、事実上緩和の出口戦略はなくなってしまったことがわかります。

週明けも米債金利次第のドル円

ドル円1時間足推移

FRBパウエル議長の発言を受けて株価は好感して大きく上昇したわけですが、債券金利のほうはさらに下落する展開となっており、米10年債も2%を割り込みかねないところまで下落が進んでいます。

Data FT

どうやらドル円は株価の上昇についていくよりも債券金利を非常に意識しているようで上値は相当重くなっているものの、下値も107円台後半で買い向かう実需の大きなオーダーのおかげで底堅く、上値も限定的ながら下値も堅いという狭い動きに終始することとなりました。
週明けも同様の状況は続きそうですが、何かをきっかけにして107.700円台を明確に下抜ける動きとなった場合には、その下にはほとんど抵抗ラインがないだけに年初の安値である104円台まで試しに行くリスクが残ります。

興味深いのは米債市場の動きで大口の投機筋は米債金利の低下が底に近づいているものとみて逆に売りを増加させ始めている状況で、ここからの動きが注目されるところです。

Data CME

債券市場は依然として相場の先行きに対してかなり悲観的な動きになっていますが、米株市場は全くそれとは別に楽観的な展開をなっており、どちらの相場の見方が正しいいのかがここから大きな問題になりそうです。
週明けの10日からの週は引き続き同じような地合いが継続しそうですが、トランプ発言で急なセンチメントの変化にも注意が必要になりそうで、ドル円も戻り売りが推奨される状況です。