7月3日にトランプはまたしても中・欧の為替政策をやり玉に上げる発言をツイートしており、欧州と中国は大きな為替操作ゲームに興じており、われわれも同じ事をやるべきだ。そうでなければ、他国が何年も前からゲームを続けるのを座っておとなしく眺めている間抜けであり続けることになる!というのがその内容で、この発言がでたあたりから米国内では主な金融機関を中心にしてトランプ政権が本当に為替介入をするのではないかといった憶測が高まっています。市場に精通する人間ほど米国が単独で為替介入にでてくるはずはないと懐疑的ですが、モルガンスタンレーに続き、ゴールドマンサックスのアナリストもワイルドカードとしてそれをやってくる可能性がかなり高いことを指摘し始めていることから現実味のある話になるのではないかという観測が非常に強まっているわけです。
2011年から一切介入を行っていない米国
米国は2011年の東日本大震災時に進み過ぎた円高を立て直すために協調介入に参加した実績はもっていますが、基軸通貨ということもあって闇雲に介入を行った実績は本当に限られています。またこれまでは米国の財務省とFedが共同して資金を出して行っているのが通例となっていますが、財務省だけで介入もできることからトランプ政権ならやりかねないという見方が高まっているようです。
もちろん中国やEUからの賛同が得られるわけではありませんから、これをきっかけに本格的な通貨安戦争が勃発した場合各国が加入に乗り出すといったすさまじい事態に発展するリスクがあることも否定はできない状況です。
金額は小さくても米国が介入したという事実は莫大なインパクト
米国の金融政策当局は単にユーロや円に対してのドル高というよりもドルインデックスの高さを見ている可能性が高く、そのレベルを下げるためにもっとも有効な手段として介入を行う場合は対ユーロで実施する可能性が高まるものと思われます。しかしどの通貨ペアに対して介入を行ってもその事実に対するインパクトは莫大でドルは一斉に売られ、しかもオーバーシュート気味に過剰反応が示現することが容
易に予想されることからたとえドル円で介入しなくても相当なインパクトがあることになりそうです。仮にドル円にも介入が行われることになった場合にはまず年初の104円台まで下落するのは簡単でしょうし、その後100円以下を目指す動きになることはほぼ間違いないものと思われます。
介入原資がかなり小さくても米国が自国の為替防衛のために介入に踏み切るという金融市場の上でのインパクトは絶大で、相場が過剰な反応を見せることになるのは実際に起きてみなくても容易に想像できる事態です。
まったくありえない話ではない為替介入
現状ではどこまで信憑性のある話か分かりませんし、ムニューシン財務長官は足元の為替政策を変更するつもりはないと語っていますが、実はこの介入ムニューシンの一存だけでも実施させることができるわけですから、不意打ちを食らわす可能性は決して否定できない状況です。EUがこれに反発すれば自国通貨安の介入合戦に突入するリスクはかなり高くなりますが、米国になにをされてもほとんど文句の言えない日本を対象にもっとも実質実効レートの高い円に対して介入を仕掛けられた場合には金融当局もなすがままの状態でいきなり90円台まで暴落することも想定しておく必要もでてきており、ここからの米国当局の対応が注目されるところです。
関税にかんしてもあり得ないことをまんまとやらかしているのがトランプのやり方ですから、為替介入はあり得ないと思うのは逆に危険な状況になってきているといえます。