ここへきてトランプ大統領のFRBに対する攻撃が非常に強まっています。いつものことなので大した話ではないと思われるかたも多いと思いますが、直接名前を挙げはしないもののFRBパウエル議長をターゲットとした攻撃は猛烈に強くなっており、直近では1%の利下げを要求するなどその中身はそうとう無茶苦茶なものになりつつあります。しかし冷静に状況を観察しますとトランプのFRB攻撃悪化は別のところにその意図がある可能性が高まってきていることがわかります。
さすがに来年11月まで株価を高値維持するのを諦めた可能性
なぜまたトランプは利下げを声高に叫び始めているのでしょうか。たしかに日本円にして2200兆円をこえる債務を抱えている米国政府ですから金利は日本のように安いほうが利払いの負担も少なくて済むわけですから、ある意味トランプが吠える理由もそれなりに理解できるののがあります。しかし株価が下がり始めた今トランプが利下げに言及するのは株価をなんとかしたいという単純な思いもあるのでしょうが、さすがに現状の株価の状況を見れば来年の11月までこれまでの株高状態を維持しておくことは物理的に不可能であり、ごく直近に迫りつつある金融市場の大幅下落に備えて、万が一相場が暴落した場合にはその原因がFRBにあることを印象付けるために行っているのではないかという見方も強まっているのです。
FRBといえどもここから大幅な政策金利の引き下げや次の緩和政策QE4を実施するためにはそれなりの大義名分が必要であることは間違いありません。トランプにとっては大統領選の3か月前までに株価が大きく値を戻していればあとは大きな問題ではありませんから、ここから一旦株価が下落してもつぎの政策を出させることで大統領選の前に回復させることを考えているのではないかという憶測もまんざら間違いではなさそうな雰囲気になってきつつあります。
もともとウォール街には非常に関心が低いトランプ
トランプは軍産複合体に属する連中を閣僚として起用したりやたらとゴールドマンサックス出身者を徴用して政権運営上はウォール街との関係も良好であるように振舞っていますが実際のところ、ウォール街の金融業界は虚業であって全く本質的関心がないことはこれまでの周辺からの情報や過去の自身の発言で明確になっています。それだけに株価の大きな下げがあるならさもありなんで、逆に大きな予算を通して当初の政策を貫徹しやすくなると考えている可能性は十分にありそうです。
こうなるとFRBが相場の大幅下落を受けてQEを再発動するときがひとつのエントリーのねらい目になりそうですが、米株はまだまだ底値を付けるのはこれからのようで、下手をするとこの夏だけでも相当下値を模索しそうな状況です。
為替のほうは株価が下がると忠実にその動きについて行くようにドル円が下落し始めていますので、まず今週本邦勢が不在の相場でどこまで下値を付けに行くことになるのかが大きな注目点です。正月3日のフラッシュクラッシュの底値まではあと1円もない状況ですから、こちらは間違いなく付けに行くとして、その先どこまで100円に近いところまで下落するのかに市場に関心があつまりつつあります。
いずれにしてもトランプの政策は既存の保守的なそれとは大きく異なるやり方をしていますから例年のアノマリーを意識せずに状況をしっかり見計らって取引していくことが重要になりそうです。これまであまり姿を現さなかったヘッジファンド勢も8月に入ってから株も為替もかなり売り浴びせに回っており、その本気度のレベルが窺われる状況です。安易なレベル感からの買い向かいではなく確実に底値を見極めるのも今月の相場エントリーには重要になりそうです。