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米国が中国をまさかの為替操作国認定してことから東京タイムの毎朝10時15分に開示される中国人民銀行の対ドルレートに非常に注目が集まるようになってきています。為替操作国認定後初日は何とか7以下に収まっていたレートはすでに明確に7を上回る状況となっており中国政府が明確に米国との貿易対立軸の中で為替による元安調整を武器にして対峙してきていることが明確になってきています。これまでは自国から外資の資金が流出するリスクがあるといったことから元安操作は行わないのではないかと見られてきた中国ですが、さすがに広範な高率関税政策を繰り出してくる米国への対抗上す出になりふり構わぬ状態に陥りつつあることが改めて確認できる事態に陥ってきているといえます。この段階でここまで対立が激化するとは市場でもだれも想定していなかっただけに両国の対応がかなり危惧されるとこりにさしかかっています。

対ドル7.2人民元以上ならアジア圏通貨危機再来か

人民元安でもっとも気になるのはアジアの周辺国への影響です。1997年アジア圏は通貨安に見舞われ各国が厳しい状況に置かれました。結果的に韓国はデフォルト寸前に陥ったことからことからIMFの管理下に置かれるという極めて厳しい事態に追い込まれたのは記憶に新しいところですが、足元では既にニュージーランド、タイ、インドが利下げに追い込まれており、97年に比べればファンダメンタルズは強くなったといってもやはり周辺国への影響が非常に注目されるところとなっています。
とくにここから対ドルで人民元が7.2を超え始めると深刻な影響がでるのではないかという見通しが市場には非常に強く8月中に人民元を起因とする大きなショック相場が示現することも考えておく必要がではじめています。

中国の切り札は米国債の売り浴びせ

為替操作国に認定された中国がここからさらにどう動くかが注目されるところですが、すでに為替での元安は示唆してみせたわけですから、さらにエスカレートすればこれまではありえなかった米債の売りを加速するという行為に出るリスクはかなり高くなりそうな状況です。確かに自国の保有債券分の価値も下落してしまうという大きな問題はありますが、ここのところ積極的に金を購入し、自国で生産された金も一切輸出に回さないという徹底ぶりを見ていますと、中国サイドもまさかの状況に向けては米債を売る覚悟を決めている可能性が高そうです。しかしこれが現実のものになりしかもロシアなどがそれに加担するような事態に陥ると米債市場は大混乱に陥ることは必至で米債を大量保有する本邦勢にも大きなダメージが加わるリスクが高まります。我々が十分に認識しなくてはならないのはこれが、金融市場という場を借りた戦争であるということで、あり得ないことが多数発生する不測の事態を十分に想定しておく必要があるということです。リアルな相場には通常あり得ないような政策が米中両国から持ち込まれており、両国にとって大きな損失を招きかねない状況になっているわけですが、もはや冷静な損得勘定では判断できない領域に入り込んでしまったことを強く感じさせられます。
果たしてこの米中の抗争はどこに落としどころを持っていくことになるのかが非常に注目されるところですが、米国は間違いなくプラザ合意2.0のような決着を画策しているはずで、EUや日本も巻き込まれる危険性は極めて高くなりつつあるといえます。本邦は10日から実質的なお盆休みに突入しようとしていますが、ボラティリティの低いこの時期になにか特別なことが起これば相場は大きく下落する可能性もあり、十分な注意が必要になってきそうです。まさに危ない夏相場のピークが到来しそうな状況です。