Photo: Agence France-Presse https://www.scmp.com/business/global-economy/article/2118685/new-york-fed-chief-dudley-retiring-middle-2018

今年のジャクソンホールはパウエルFRB議長の講演に注目が集まりましたが、結果的にはその直前にわざわざぶつけてきた中国の対米報復関税の実施をそれを受けてのトランプの怒り爆発ツイート、再報復関税の実施などにすっかりかき消されるような事態となりました。パウエル講演では特段トランプの政策に歯向かう姿勢が鮮明になったわけでもなければ利下げを明確に示唆したわけでもなく、市場に与えた影響はそれほど大きくありませんでしたが、足元ではダドリー前ニューヨーク地区連銀総裁がトランプの政策ややり口を猛然と批判する内容のコラムをメディアに掲載したことから大変な話題になってきています。
ダドリー氏はブルームバーグへの寄稿で米中貿易摩擦は人為的に作り出された災害であると明言しており、景気悪化を回避する追加利下げはトランプ氏の対中強硬姿勢を助長させ、逆効果にしかならないと指摘し、FRB関係者としてはめずらしくトランプに反旗を翻した格好になっています。
従来からの伝統的な経済政策をとってきた人間からすれば、完全雇用が実現している最中に減税を行い、多少株価が下がったからといって予防的としながら利下げを行うというのはまったく納得のいかない政策であることは間違いなく、ダドリー氏の発言内容にはかなりうなずけるものがあるのは事実です。ダドリー氏はクマに餌をやるなという言い方をしておりこれ以上の利下げに明確に反対の異を唱えていますが、果たしてほかのFRBメンバーはこの意見に同調するのか、はたまたトランプに意向に従って利下げを継続するのかに注目が集まります。

トランプの反応にも関心が高まる状況

トランプ大統領自身は利下げもさることながら、どこかのタイミングでFRBがQE4を実施することを期待していることはどうやら間違いなさそうな状況です。そういう意味では株価が今の段階で大きく下落し利下げだけでは対応できない状況に陥るのはトランプにとってはそれほど悪い話ではなさそうで、株価下落でも支持率が下がらないというデータも出始めていることからとにかく株の下落はすべからくFRBのせいであると責任を押し付ける腹積もりが感じられます。こうなると簡単に言うことを聞かないパウエル議長が存在しているほうが都合のいい部分もあり、トランプが積極的にパウエルのクビをすげ替えにでてくるのかどうかにも注目が集まります。

一旦高まった9月FOMCの利下げ確率は落ち着いた状態に

Data CME

米中の報復関税合戦を受けてFedWatchの9月FOMC利下げ確率は0.5%が30パーセント以上の高い確率となりましたが、足元では米中対話が継続という報道を受けて0.25%の利下げ確率が99.6%程度と若干その数字が後退し落ち着きを見せています。ただし向こう一年の利下げについてはすでに1%以上を市場が織り込んでしまっているだけにFRBが利下げを急がないとなれば、それなりの催促相場が示現する可能性もありFOMCの結果よりそれを受けての相場の反応の方に関心が集まりそうな状況です。

市場からはFRBがすっかり株価を見ながら金利の政策を決めているということが露見してしまっていることから相場の状況が悪くなれば株価を下げることでFRBに催促するという相場状況が完全に続いてしまいそうで、ある意味FRBパウエル議長は市場との対話に大失敗してしまっているだけにここからこの状況をどう改善させていくのかも大きなポイントになりそうです。いずれにしてもこの秋の相場は例年のように上昇過程に入っていくかどうかはよくわからないものがあり、相当慎重に相場の動きを見極めていく必要がありそうです。