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米中の通商協議は10月に延期となっているわけですが、中国系のメディアに中国が積極的に米国からものを買うつもりがあるといった楽観的な記事が飛び出すたびにアルゴリズムが稼働して株もドル円も買い上げるというなんとも節操のない相場が展開しています。市場では足元の状況をリスクオン相場と見ているようですが、冷静に見てみますとなにも中身は変わっていないのが実情で、大きな巻き戻しが出ている相場はさらに再巻き返しに見舞われる可能性もでてきています。

対中交渉ではピーターナヴァロNTC委員長の極めて厳しいシナリオ通りに展開し始めていることが見え始めており、どうやらトランプは完全にナヴァロの戦略に乗るつもりのようで、市場にはびこる楽観論とはまったく別の恐ろしい相場展開が突然起きることも想定しておく必要がありそうです。

トランプはナヴァロと確信犯的にFRBによる早期QE4を実現させるつもりか

このピーターナヴァロなる人物はハーバード大学の経済学博士号を持つなんと民主党員です。「Death by China」など、中国の経済・軍事的な台頭の危険性に焦点を当てた著書で知られる相当過激な人物で同氏のメインターゲットは中国であり続けています。

ナヴァロの言動はとかく全米のメディアで頻繁に叩かれておりメディアの嫌われ者的存在になっているようですが、彼は足元の米中戦争の裏で米国のウォール街の連中や一部の富裕層が今でも依然として中国と結託する動きをみせており、ホワイトハウスへの波状攻撃が続いているとかなり厳しく足元の状況に不満を述べています。

また最近ではウォールストリートジャーナルにも景気後退に備えよと警告を発する

寄稿を行っており、米中貿易戦争で株価が大幅に下落するなどやむなしで、むしろ国民はこれを起因とする景気後退に備えるべきであるという注意喚起を自ら発している状況です。大統領選の前年は株価が下がらないというアノマリーがあることから、来年まで間に株価が大きく下げることになれば逆にトランプの再選はないというのがウォール街のかなり固定的な見方になっているようですが、9月にすでに追加関税第四弾を発動し、しかも10月1日はさらに税率を上げる動きをまったく止める気配がないのがトランプ・ナヴァロの強硬コンビのやり方ですから、景気が後退するのはもはや時間の問題でここからずっと株価を高値で引っ張ることはすでに諦め

徹底的な対中通商戦争の激化で年内にFRBができるところまで利下げさせることを引き出したうえで、いよいよ手立てがなくなったところでQE4を実施させることに成功すれば来年の夏までに株価再浮上させるということをこの両者が基本シナリオにしている可能性はかなり高まりつつあります。

ジェフリーガンドラックも同様の内容を指摘

新債券の帝王ジェフリーガンドラックも同種の発言をしており、トランプは意図的にあしもとの経済を弱める動きにでているといった非常にリスキーな戦略に打って出ているという指摘を行っています。10月初旬に開催予定の米中の協議ではいよいよ為替の問題も協議の議題にのるようで次回は中国人民銀行の関係者も出席するということですから関税で抑えきれない問題は数量規制を飛び越えて一気に為替水準の要求をつよく吹っ掛けるつもりであることはどうやら間違いなさそうです。

こうなるとプラザ合意2.0のような動きになりそうですからかなり注意しなくてはならなくなりそうで、楽観的な相場の見通しとは一転して株を中心に大きな下落に見舞われることも十分に想定しておく必要がありそうな状況です。

ここのところトランプから中国やFRBに対する厳しい内容のツイートがでなくなっていますが、これですべてが終了と考えるのは大きな間違いで問題はこれからやってきそうな状況です。