中国デジタル人民元を11月に解禁の憶測が飛び交う

米国の経済誌フォーブスが観測記事として11月に中国が独自の仮想通貨、いわゆるデジタル人民元を解禁するのではないかという情報が市場を賑わせています。中国人民銀行は現状ではそのような予定はないと否定しているようですが、具体的には今年の11月11日、光棍節別名独身の日にちなんで開催される中国内のバーゲンから利用開始になるという話が出回っており実際に行われる可能性が高まっています。

既に中国人民銀行では2014年ごろから仮想通貨の研究を進めており、かなりレベルの高い人民元と価格連動するステーブルコインを発行することが期待されます。

とくに今回の独身の日の解禁に当たっては中国人民銀行が単純に発行するだけではなくアリババのアリペイやテンセントのウィーチャット・ペイ、ぎんれんカードを発行する中国銀聯等7つの民間組織とも連携して発行されると予想されるだけに仮に11月が見送られたとしても既にかなりの準備や民間企業との連携も進んでいるようで、そのローンチは仮に11月が見送られたとしてもその後かなり早期になることが予想される状況です。また実験的に特定地域で導入といったパイロット運用も十分に考えられます。

デジタル人民元が先行登場すれば西側諸国は完全に遅れをとる状況に

足元では米国政府もドイツ、フランス政府もフェイスブックのリブラのローンチを無理やり阻止しようとする動きが強まっていますが、たしかに安全保障上の問題から考えれば特定の民間企業がほとんどこれまで銀行が行っていたような国際送金業務をカバーすることになり、しかも日々の決済を通じて複数の国民の支払い状況をすべて掌握してしまうというプライバシー上の問題を抱えることに非常に危機感を覚えるのはある程度理解のできるものといえます。しかしFRBもECBも一定の研究はしているのでしょうが積極的に独自のステーブルコインの発行を目論む動きにはなっておらず、この部分だけ考えても中国人民銀行の積極的な姿勢とはかなり温度差がある状況となっています。

中国の場合、国民の動向を監視するというのはもともと金融の世界に限らずかなり広範に行われていることですから、西側諸国で問題となるプライバシーのイシューに関してはまったく無視してステーブルコインのローンチができる可能性は高く、むしろ徹底的に管理できることををメリットと考えている可能性も高く、この意識の違いからステーブルコインの領域では先行導入する中国に西側主要国が大きく後れをとることも十分に考えられる状況です。

法定通貨領域におけるドルの基軸通貨が崩れる可能性も

一般的に考えればデジタル人民元ができても中国国民は積極的に利用するようになるのかも知れませんが国際的にそれが急激に普及するかどうかは全くわからない状況です。ただし、中国との取引のある国や企業が積極的にこのデジタルコインを利用し始めるようになれば想像を超えるような普及に弾みがつく可能性は否定できず、とくにドルベースでの取引をおこなってきたものが中国人民元ベースへと移行していった場合には思わぬ領域でこの通貨のシェアが急激に高まることも十分に考えられる状況となります。フェイスブックのリブラ担当であるデビットマーカスは我々が行動に失敗したとき価値観が劇的に違う人々によってデジタル通貨が支配されれうことになるだろうと発言して暗に中国のデジタル通貨戦略に凌駕されかねないことを示唆していますが、米国はせっかくうまく使えるかもしれない重要な武器を自ら握りつぶそうとしているという指摘は強ち間違いではなくなりそうです。

今年の夏のジャクソンホールの会合ではBOEのカーニー総裁が仮想通貨の発行で米ドルの基軸通貨の体制を大きく変えるべきであるといった発言をしてかなり市場を驚かせることになりましたが、もしかするとデジタル人民元がそうした基軸通貨の代替え通貨になるというまさかの事態も考えておく必要がありそうです。

中国人民元のデジタル化は当然のことながら既存の法定通貨にも影響を与えることになりますので、FX投資家はここからの動きを非常に注意深く見守る必要がでてきているといえます。足元では米中の貿易摩擦が激化し、10月からはいよいよ中国人民銀行の関係者も会議に入れて為替も議題に入ってくることになるようですが、中国にとっては早急にこうしたステーブルコインを立ち上げることが対米の為替政策にも影響をあたえかねない状況で、非常に注目されることとなっててきているようす。仮想通貨の世界ではいきなり法定通貨とペッグするステーブルコインのローンチが大きなテーマになってきているわけですが、中国が一歩抜きにでた動きをすることでこの市場環境も予想以上に激変する可能性がでてきていることを強く感じされられます。とりあえずは本当に11月11日にこのデジタル人民元が解禁になるのかどうかをしっかり見守りたいところです。