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パウエル議長は10月8日、デンバーで開催された全米企業エコノミスト協会の年次総会で講演し徐々に準備預金の供給を増やしていく措置を近いうちに発表する方針だと述べました。これはこのコラムでもすでにご紹介しているいわゆるPOMOの類でパウエル議長はとにかくQEではないと何度も念を押しながらも緩和のプログラムを実施していく意向を表明しています。準備預金管理のためのバランスシートの拡大は、金融危機後に当局が実施した大規模資産購入プログラムと一切混同されるべきではないとし、最近の技術的な問題も、その解決に向けて当局が熟考しているTビルの購入も、金融政策スタンスに重大な影響を与えるものではないと最近頻発した短期レポ市場の金利上昇を抑えるに過ぎないことを強調しています。まあよほどFRBがQEを再開したと言われることで都合の悪い問題でもあるのかもしれませんが、内容はほとんどQE4の代替え策となりそうで、こうなると米国の株式市場は中央銀行バブル相場が延命しそうな状況で、株価の大きな下げは期待できそうもなくなってきています。こうなるとドル円も大幅下落はなさそうで、10月ハロウィンエフェクトでの買いを検討することも必要になってきているように感じられます。

FRBは過去3週間で実質的なステルスQEを実施

レポ金利の暴騰が起きていこうFRBは既に資産の買入額を大幅に増やし始めています。実際過去3週間では1760億ドル、直近の一週間でも881億ドルとかなりの資産買入に踏み切っており、その金額はバーナンキ議長時代のQE3の週間の買い入れ額すら上回っているわけですから、これがQEであることはもはや間違いなさそうな状況です。

こうなると市場が注目している利下げのほうがどうなるかが大きな関心事ということになりますが、今のところパウエル議長の口から利下げを確約するような言葉は一切出ていない状況です。

ただし、ここまで市場が利下げを織り込んでしまいますと今年あと2回行うかどうかは別としても年末までに1回は行わないと相場の失望売りを招きかねないだけにFOMCにおける調整と市場への対話の進め方が大きな問題になりそうです。

中央銀行バブル延命が本当に市場のためになるのかどうかは疑問

ところですでにリーマンショックから11年を超えて全く調整しない相場が延々と続くことになるわけですが、果たしてこうした状況を無理やり中央銀行が継続させて相場にとっていいのかどうかには大きな疑問が残ることになりそうです。本来相場は一定の調整を伴って下落することになれば回復も早くなりますし、自律的の再上昇の軌道に乗ることもできるのですが、まったく下落を許さない相場状況を続けてしまいますとダイナミズムを失うことになるのは間違いなく、今回のステルスQEによって相場が延命されることになっても本当に市場のためになるのかどうかはかなり大きな問題になりそうです。むしろ暴落を先送りすることでますます相場がいびつな状態に引き込まれるリスクもあるわけですからすんなり容認できないところもでてきそうです。ともかくもトランプ大統領にとってもこの隠れQEはかなり好ましい内容であるはずで金利の取り扱いは残されますが、それなりにFRBへの風当たりも変わってくることが予想されます。大統領選挙まではまだ1年以上の時間が残されているわけですからここから隠れQEを実施して本当にいいのかという問題もありそうですが、とにかく相場を下げさせないためにはトランプ政権はなんでもありの状況のようで、だれにも止められない時間帯に入ってきているように思われます。