Photo Bloomberg https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-10-30/Q07HQEDWLU6H01

10月31日日本時間の午前3時、FOMCの結果発表があり市場の予想通り0.25%の利下げが実施されました。

これで今年は3回にわたる利下げが行われたことになるわけですが、経済状態は決して最悪というわけでもないのに、市場の要求に応える形でこうした予防的利下げが行われるというのは正直なところ前代未聞の状況で、パウエル議長がいかにもっともらしい説明をしても、相場の利下げ催促に応えざるを得なかったFRBの厳しい状況が浮かび上がってきます。

株式市場をとにかく下げたくないというのは、主要国のどの政権でもほぼ同じような欲求があることは間違いありませんが、特にトランプ政権はその期待が非常に高く、FRBに対してもあからさまに緩和を要求してくるところが歴代政権とは大きく異なる部分といえます。

一度緩和をはじめたらやめることができない厳しい状況

人気ロックグループ、イーグルスが1977年に発表したホテルカリフォルニアという曲の歌詞にYou can check out anytime you like. But you dan never leave.

あなたはいつでも好きな時にチェックアウトできる。しかし決してここを離れることはできない

と言う名の台詞がありますが、世界の中央銀行が直面しているのはまさにこの状況で、FRBはこの台詞のとおりに陥っているとの指摘が、市場でも多く寄せられるようになっています。

2008年のリーマンショック直後はとにかく、100年に1回の世界危機であるとのことから、FRBが主導的役割を果たしながら積極的に量的金融緩和を行ってきたわけです。

しかしこの緩和措置は都度3回にまで及ぶようになり、その間もPOMO・常態的な公開市場操作なども行われて、市場には資金がとにかく湯水のごとく供給されるようになってしまいました。

そのため株価が少しでも下落するような動きになりますと、中央銀行による緩和措置を求める声が高くなり、何があっても中央銀行頼みという状況が完全に出来上がってしまうことになりました。

したがって、一旦は出口に向かおうとして利上げを行い、資産の縮小に踏み切ったイエレン議長時代のFRBの動きは長く続かず、1年も経過しないうちにまたしても緩和へと変更せざるを得なくなってしまったわけです。

ここからどこまで続くのかが非常に大きな問題に

米国の場合、FRBが資産買入を増やしている期間はよほどのことがない限り、米株は下がらない状況が延々と続いています。

テクニカル的にはNYダウもS&Pもピークをつけてここから下がる可能性を指摘する向きも多いわけですが、過去にFRBが資産拡大を行っている間は、確実に株価も上がっていることを考えますと、ここから売りに回るわけにも行かず、ドル円もそれと同様に株価がじり高を維持している限りは、大きく下落することが考えにくくなってきています。

11月は日柄的に実需のドル買いも多くなる時期ですし、一説によれば衆議院の解散を意識しているのか、株も為替も買い支えの部隊がすでに国内市場に登場しているという話も出てきています。

こうなると、テクニカル的に売りサインが出ても果たして簡単にそれに乗るかどうかは、相当よく考える必要が出てきているようです。

例年10月末のハロウィンの頃に下落した相場に買い向ってそのままポジションを保有していれば、12月まで上昇する確率が高くなるのが米株やドル円であるわけですが、果たして今年もそれがワークするのかどうかが非常に気になるところです。

トランプ政権はここから株価が崩れるようなことになれば、更なる緩和をFRBに求めてくることになるでしょうから、売りがどこまで機能するのかは真剣に考えなくてはならない時間帯に差し掛かっているようで、相場の判断は一段と難しくなってきています。

ただいずれにしても、こうした中央銀行主体の緩和措置の連発でなんとか持たせている相場もやがてその効力が発揮出来なくなる瞬間が訪れるはずで、当然の株価が維持できても、先行きが非常に心配になるところです。