米株は連日史上最高値を更新するなど、かなりアグレッシブな動きをしています。
FRBが利下げを三回連続予防措置とし実施したことに加え、OMOと呼ばれる公開市場操作で短期のレポ市場が上昇しないようにしたうえに、月額600億ドルのTビル(短期債)の買入による資産拡大を行っているわけですから、QEではないと否定しても事実上の量的金融緩和措置であることは間違いなく資金が市場に流れ込むことで、株価への資金の投入もかなり明確になってきています。
ただし、足元の株価はもっぱら企業の自社株買いが中心で、比較的限られた市場参加者の中で相場が動いている点が気になるところです。
また、すでにかなりいい線まで上昇していますので、ここからはじり高はあっても爆発的に上昇するとはなかなか考えにくい状況になってきています。
米中の通商協議の第一フェーズで、今月中に一定の合意がはかられ調印にこぎつけることができれば相場が下がることは無さそうで、感謝祭からクリスマス前までには、堅調に推移することも意識しておく必要がありそうです。
投機筋のVIX先物売りがまたしても史上最大規模に
米株市場がきわめて楽観的な相場状況であることをいいことに、投機筋のVIX先物の売りがまたしても史上最高レベルに積み上がり始めています。
このVIXの先物売りは、2018年2月に大きくVIXが上昇したことから、売り持ちをしていた投機筋が一気に買戻しを余儀なくされ、なんと価格の90%以上を失うという大惨事を引き起こしています。
結果、損失資金を埋め合わせるために様々な資本市場の保有商品が売却され、株価も当然大きく下落したのは記憶に新しいところです。
しかし、ここへきてうまい投資先が見つからないのか、またしても投機筋が同じ轍を踏もうとしている状況で、なんらかの形で株価が下落し始めると、一気にこのポジションの巻き戻しから相場が大きく下落するリスクが高まることになります。
もともとVIX先物などにはそれほど大きな流動性が存在していませんから、相場が売りに傾き過ぎてその巻き戻しが起きた場合には、2018年のケースのように激しい相場の下落が起きて巻き込まれる市場参加者は、飛躍的に拡大してしまいます。
足元のような超楽観相場はこうしたところに落とし穴があるもので、相場のセンチメントがいきなり変化する段階で、とてつもない相場の下落が実現する危険性があることを十分に認識して取引する必要がありそうです。
CNNの恐怖と欲望のバロメーターは既に89を示現
これまでご説明したように、投資家の恐怖感を示す指数として有名なのがVIX指数ですが、それとは別に投資家の恐怖と欲望のバロメーターとして、0から100までの数値で現状を示してくれるCNNのFear & Greed Indexが現状を理解する上では役に立つものとなっています。
このバロメーターでは、50を下回れば恐怖感が高まっており、逆に50を超えると利益獲得に市場参加者が貪欲な状況を示していることがわかります。
この指標は以下の7つの材料から計算されて表示されています。
- 株価モメンタム: S&P500対125日間の移動平均から現在の株価がどれくらい乖離しているか
- 株価の強さ:NY証券取引所で52週間の最高値と最低値を記録した株式の数
- 株価の幅:株価が上昇している株と下落している株の数量の差
- プット・アンド・コール・オプション:プッシュ/コール・レシオ、強気なコール・オプションの取引量と弱気プット・オプションの取引量の差
- ジャンク債需要:投資適格債とジャンク債の利回りの差
- 市場のボラティリティ:ボラティリティを測定するVIX
- セーフヘブン需要:株式と国債のリターンの差
したがって、VIX指数単体をチェックするよりも市場の状況が、さらに正確にわかるのが大きな特徴となっています。
足元のインデックスは、以下のように86からさらに上昇して89を示しており、もはや総楽観相場の極みになっていることがはっきりとわかります。
過去にもこの数値が90を超え始めると、必ずどこかで相場の調整が起こっていますから、足元の状況はかなりそれに近づいており、上昇相場に順張りでついて行くといっても相当いい線まで来てしまっていることが改めて確認できます。
こうした状況下で、すぐにショートのポジションを持って下落を待ち構えるというのは、相場に踏みあげられる可能性が高いだけにかなり難しいものがありますが、相場の状況をみながら慎重に売り場を探すことが重要になりそうです。
今のところすぐに相場がどうこうするという危機的なところまでは行っていませんが、年末まで相場が何事もなく走り続けるかどうかはわからない部分が多く、下手をすれば11月中になんらかの調整が入ることも視野に入れておく必要がありそうです。
とくに米国勢は投機筋も含めて、感謝祭のあたりからクリスマスに向けて休暇シーズンに入りますから、手じまいも多く出やすく、ファンドの決算がらみでの売りも入ると思わぬ下落相場が実現することもありますので、相当注意が必要です。
為替は株の上昇に完全には連動していませんが、株価の下落にはそれなりの反応を示すものですから、要注意の時間帯となります。