強気と楽観的に見通しを出すことで有名なIMFが、今年10月末に発表した金融安定報告書の中身がかなり衝撃的で、市場で大きな話題になり始めています。

この報告書では、いわゆる世界の経済成長が3.0%へと下方修正されたことも注目されましたが、それ以上に大きな反響を呼んでいるのがデフォルトリスク、つまり債務不履行になりそうな危険性のある企業の債務が、2021年に主要8か国だけをみてもなんと19兆ドル、日本円にして2000兆円にものぼる金額になっています。

しかも、リーマンショックの半分ぐらいのレベルの危機が訪れても、この債務が完全に破綻するという衝撃的な内容となっているのです。

長年の日米欧の主要中央銀行の低金利、かつ緩和措置でじゃぶじゃぶに市場へ供給された資金のおかげで、本来危ないはずのレベルの企業でさえ簡単に借り入れを行えるようになっていますし、さらに債券もかなり低利で発行することが長年続き、こうした企業債務の肥大化に繋がっているものと思われます。

ここから先は、簡単にロールオーバー(借り換え)もできないでしょうし、なにより格付けが上昇し始めると、もともと流動性がそれほどない市場ですから、かなり大変な信用収縮が実現しかねない状況です。

恐らく次の相場の暴落は、社債に起因したものなのではないかとさえ、思われるところになってきています。

それにしても日本円にして、2000兆円に及ぶ債務リスクとはかなりのもので、一部の欧米系メディアはこれを社債爆弾と呼び始めている点もかなり気になります。

社債に火がつけばレバレッジドローン、CLO、ジャンク債へ波及か

長々と継続している低金利時代のおかげで、与信も甘く借り入れができたのが、社債とそれに関連する周辺の市場の状況で、特にレバレッジドローンやCLOの市場は、イールドハンティングを進める本邦系の機関投資家なども無闇やたらと参入して、非常に大きな市場を形成し、今もそれが延々と続く状況になっています。

しかし、ひとたび社債のデフォルトが増加し始めるとまず個別企業の格付けが見直されることから、いきなり信用不安が高まることになり、もともと格付けの高くないレバレッジドローン、それを債券に組成しなおしているCLO市場は、短期間に驚くほど大変なことになりかねない状況に陥る危険性が高まります。

特に、本格的な信用収縮が一気に起きると、既存の社債発行企業は新たな債券を発行して乗り換えることができなくなりますし、レバレッジドローンを利用している企業はロールオーバーができず、いきなり資金不足に陥る可能性が高まります。

元々このあたりは、流動性がそれほどたかい市場ではありませんから、参加者が一斉に出口に駆け込むことになれば、いきなり枯渇して暴落相場が実現するのは実に簡単なことです。

「新債券の帝王」の異名をもつ、ダブルラインキャピタルのジェフリーガンドラックもかねてから、社債市場が次の相場暴落の中心地になるのではないかといった指摘を早くからしていますが、現実にそのリスクが高まりそうで、為替で市場に参入している参加者といえども、この領域の状況変化にはそうとう注意を払う必要が出てきているようです。

IMFは本邦の株式市場の過大評価を指摘

今回発表されたIMFのレポートでは、株式のいくつかの主要市場において過大評価がされているという指摘もされていますが、その最も過大評価されている市場が日銀で、必死にETF買いをして株価指数に下駄を履かせている状況であることも、暗に指摘する内容となっています。

足元の国内株式相場が、企業業績と乖離しながら米株の上昇だけに支えられて妙に値上がりし続ける状態というのも、やはり実態経済から考えれば、相当不思議な事態であるのは間違いなさそうで、こうなるとここから先はそれほど大きく上昇しないのは、もはや確実な状況になっているようにも思われます。

Data IMF https://www.imf.org/ja/News/Articles/2019/10/15/blog-gfsr-lower-for-longer-rising-vulnerabilities-may-put-growth-at-risk

ここからの市場は、極めて危険性の高い世界主要国の社債爆弾が、「いつ破裂して相場が大きく下落するか」ということに関心が集まります。

現状では、米欧の中央銀行がさらに金利を下げ、資産の買入をすることで緩和措置を勧めようとしているわけですから、短期的に大きなリスクが発生するのかどうかはよくわかりません。

しかし、いきなりインフレへと転換しないタイミングでも、こうした企業の社債による債務の問題が表面化した場合には、株価や他の債券市場にも一気にそのリスクが飛び火する危険性がかなり高そうで、IMFは2021年の予想としているものの、実際にはもっと前倒しでリスクが高まることも考えておく必要がありそうです。

なんとも暗い気分にさせられる内容ですが、もはや見て見ぬふりはできないところに差し掛かっていることがわかります。