1月4週の為替相場は中国・武漢でのコロナウイルスに起因した新型肺炎を発症する患者が急増し、死者まででたことからいきなりリスクオフの相場となり株もドル円も下落する動きが強まりました。
ただ24日にWHOが緊急事態宣言を出すのを一旦見送ったことから米株も日本株も買い戻され、ドル円も110円に戻ることはできませんでしたが、109円台中盤まで値を戻す展開となりました。
ただ、週末のNY市場では米国内での発症例が増加するとともに、中国での罹患者が大きく増加し始めたことから一転してリスクオフが強まることとなり、ドル円は109.300円台で週の取引を終えています。
中国内での新型肺炎感染者は激増中
発症者の数は時間を追うごとに増えており、ここ数日では倍増し始めていることから、完全にパンデミックになっている可能性があり、週明け相場も注意が必要になりそうです。
ちょうど旧正月と重なり、事前にもっと適切な策を講じることができなかったのが残念な状況ですが、日本国内での中国人の移動はもとより、海外にもこの時期相当数の中国人観光客が出国しており、一体どれぐらいの人が来日するのかは正確な数字が判っていません。
既に東京の銀座や原宿、秋葉原といった人気スポットに加え観光先としての富士山周辺などではマスクをつけた中国人観光客の姿が見られるようになっており、国内での感染者の急増も非常に警戒されるところとなっています。
インバウンド消費の書き入れ時を見込む国内の事業者にとっては歯痒い状況といえますが、米国、日本ともに発症者が激増し、かつ死亡者が出た場合には相当なネガティブインパクトが金融市場に与えられることから、予想をこえた相場の下落には注意が必要になってきています。
上海市場休場期間は東証の株式市場がリスクヘッジで売られる可能性も
上海株式市場は1月24日からすでに春節で休場となっており、週明け30日までは市場は継続してお休みであるため、新型肺炎の影響が相場にでるのは31日ということになります。
しかし過去のケースを見ますと、こうした中国市場がお休みの際に何かリスクオフ的な問題が起きますと東京の株式市場がリスクヘッジの代替市場として機能することが多く、日経平均が大きく売り込まれる危険性を考慮しておく必要がありそうです。
日経平均が大きく崩れた場合には、当然のことながら相関性の高いドル円が崩れることはありそうで、特に24日までになんとか支えられた109円が下抜けした場合には下落のスピードはかなり速くなりそうな状況です。
ドル円はこれまで長く上値を止められていた109.700円レベルを上抜いたことから逆にこのレベルが下値のサポートラインとして機能してきましたが、先週後半これを再度下抜けたことから逆に110円台にまで戻ることができなくなっています。
週明け相場に関してはむしろ上値を追う形に戻るよりは下値を模索するリスクの方が高そうで、109円を下抜けした場合には200日線が推移する198.550円レベルまでの下落も視野に入れる必要がでてきているようです。
特にこの期間に日本国内で日本国民が新型肺炎を発症、さらに死亡といった最悪の事態が発生した場合にはこの水準をさらに下抜けることも覚悟する必要がありそうです。
まさにパンデミックへの拡大状況次第ということになりそうですが、2002年に突然発生したSARSに関しては最初の感染が見つかってから収束するまでに翌年の7月まで実に8カ月ほど時間がかかっているだけに、今回の事案もどこまで被害が拡大するかで株にも為替にも与えられる影響がかなり異なるものになりそうです。
為替の場合、実需も伴いますので比較的底をつけるまでの時間は短くなりそうですが、それにしても病気の世界的な拡大が大きなものになった場合、相場の下落も大きなものになりますので注意が必要です。
シーズナルサイクルから言えばドル円はここから多少上がりやすくなるタイミングを迎えますが、今年に関してはイレギュラーな状況からこれがワークしないことも想定しておくべきでしょう。
ユーロドルはドル高傾向が鮮明
1月23日はECB理事会が開催され、主要政策金利を据え置くとともに、インフレ目標や金融政策を巡る「戦略的見直し」が開始されることが発表されました。
これにより2003年からの大規模な金融政策が再評価されることになりますが、結果がでるのは今年の年末という話となっていることから、これが出るまではECBの金融政策に変化なしと市場が判断することとなりユーロは売られる展開となっています。
この時期、ドルインデックスは強含むこともありユーロドルは引き続き下落傾向が継続しそうな状況になってきています。
新型肺炎に関しては欧州でも既に発症者が見つかっていることから、拡散の状況次第ではさらにユーロが売られる展開も視野に入れておく必要がありそうです。
パンデミック関連での相場の動きは過去にあまり参考になるものがなく、せいぜい2003年のSARSの時にどうなったのか位しかベンチマークになりませんが、豚インフル、エボラ、中東呼吸器症候群(MERS)、ジカウイルス感染症といった感染症に関しては意外に市場への影響が少ないままに相場が収束していることもあるため、今回の新型肺炎がどこまで影響を及ぼすことになるのかは引き続き注視していく必要がありそうです。
過分に売り急いだ場合には、逆に相場に取り残されるといったリスクも存在することをしっかり認識しておくべきでしょう。
そういう意味では為替相場にとっては、なかなか厄介な材料であるといえそうです。