2月3日からの1週間は上海市場が春節明けで再開することから、大幅な下落が起きるのではないかという心配も高まりましたが、中国当局が日本円にして18兆円という流動性確保のための資金を投入しました。

しかも大口の投資家に株を売らなようにという通達を出し、株の買い支えを要請してことから相場が大きく崩れることだけは回避され、これが新型肺炎全般に対しての楽観的見通しを引き出すこととなったことから米株は再上昇、日本株も大きく値を戻してそれにつられるかのように、ドル円も110円近くまで上昇するといういわゆるリスクオン相場が再開されることになってしまいました。

ドル円は本邦の個人投資家のショートがあぶりだされる形となりましたが、損切をしない本邦の個人投資家はストップロスハンティングでかなり高い価格に上昇しても延々とポジションを持ち続けることから、今度はなかなか下がらないという動きになってしまい、一瞬110円を乗り越えて上昇しそうな気配も漂いました。

ただ、ショートのストップロスをつけて上昇するのもさすがに110円手前でお仕舞いで、110円を超えたレベルは実需筋の売りと機関投資家のロングの買戻し、逆に売りが待ち構えていることからここから簡単には110円を乗り越えていけない状況になってきています。

7日に発表された米国の雇用統計直後も110円に一旦タッチしたもののそれを超えることはできず、結局週末のNYタイムで新型肺炎のリスクが再燃しはじめたことから109.700円レベルで一週間の取引を終えています。

ドル円1時間足推移

裁量取引をする人の感覚とは違うアルゴ主導のリスクオン、リスクオフの不思議

先週の取引でもっとも違和感を感じたのは、やはり新型肺炎に関する中国をはじめとする状況がどんどん悪化する中で、中国当局が大量資金を投入して公開市場操作を行い相場が大幅下落をしないで済んだことだけを評価して相場がリスクオンへ返り咲いたことです。

当然ニュースヘッドラインに連動するアルゴリズムが市場を先導したものと思われますが、欧米勢にとっては所詮極東地域で起きているに過ぎないという楽観論があるのかも知れません。

但し金曜日、横浜に入港しようとしたクルーズ船から大量の感染者がでたという報道あたりからNY市場のセンチメントも変化したようで、いよいよ中国本土だけの問題にはとどまらないことが改めて認識された可能性がありそうです。

このあたりのリスクオン、リスクオフ感はどうも人が裁量取引を行っているときに総合的な情報から感じるものとはかなり異なる部分があるようで、センチメントはかなり短時間でころころ変わる雰囲気があるのはなんともトレードがやりにくい状況を作り出しているといえます。

また株価は米株を中心にかなりの楽観論をベースにした取引が続いていますが、やはりコモディティと為替は相当冷静であり、ここから新型肺炎の経済に及ぼすネガティブな効果を無視して楽観的な相場展開ができないことを表しているようです。

何より原油価格は景気の先行きがかなり悪化するであろうことを強く織り込んでいますが、これまで正の相関性が強かった米株も日本株も、まったくその動きを無視して突っ走り始めている点は非常に気になるところです。

中国の状況は想像以上に悪い

中国における新型肺炎の拡散情報は公的なアップデートこそされているものの、どうも実態からかなり乖離しているようで感染者数も死亡者数もほとんど信用はできませんが、中国政府自体が正確な数字を把握していない可能性もありそうで、この部分についてはいくら詮索してみても何の意味もなさそうな状況です。

むしろ我々が気にしなくてはならないのは中国の経済的なダメージの問題で、すでに北京でも上海でも外出が禁止され春節以降まともな経済活動が再開されていない点はかなり重要な問題になってきています。

中国政府は中国2025を掲げてITをバックグラウンドにして爆発的な成長を目論んでいますが、その中心地となるのが武漢であるだけに、今回のコロナウイルス起因の新型肺炎のまん延はかなりのダメージであり、サプライチェーンの寸断で中国国内での自動車生産のみならず、中国から部品の供給を受けているアジア圏の自動車産業にも相当なダメージを与える可能性が高まります。

日本国内の消費はこの問題でどん底に落ち込むことは容易に想像されるところで、1~3月のみならず4~6月までマイナス成長を引きずった場合には日本国内の経済に対する影響も多大なものになるのは時間の問題で、改めて相場がこのリスクを織り込み始める危険性が現実化し初めています。

週明け相場は俄かリスクオンの完全終焉に注意

週明け相場に関しては先週と一転して改めて、新型肺炎リスクを市場が詳細に織り込みにいくリスクオフ相場が展開する危険性に注意が必要となりそうです。

テクニカルチャートから見ますと、ドル円はさらに上に行く可能性も当然残されますが、ファンダメンタルズの現状を考えればそんな楽観論が続く可能性は低そうで、これまで以上にリスクオフの動きが強まることに注意が必要になりそうです。

この場合ドル円、クロス円が円高に向かう可能性もあり、ドル円は再度108円台に下落することも想定して取引する必要がありそうです。