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中国起因の新型肺炎は週が変わっても、依然として発症者の拡大が止まらない状況です。

中国では10日から一部の企業が工場や店舗の再開をしていますが、まだ主要地域ではほとんどの労働者が働き始めることができない状況で、この肺炎の拡大に伴う中国国内での経済鈍化は非常に大きなものになろうとしています。

金融市場では2003年のSARSとの比較から相場の先行きを予測する様な動きが強まりましたが、実態はSARSの時とは全く異なるもので、経済に与える影響は当時に比べて莫大なものになろうとしています。

もちろん発症者や死亡者の拡大は大変重要な問題ですが、それとともに金勇市場に関わるトレーダーとしては相場がここからどうなるのかについて十分にチェックしていくことが必要になってきているようです。

米国では弾劾裁判をすり抜けたトランプ大統領がこの時期中国の経済が弱ることから、中国を落とす絶好のチャンス到来とばかりに強硬姿勢を見せており、FRBもトランプの動きに追従する形で中国起因の景気減速に対して緩和を振りかざして相場の下落を抑える動きにでそうな状況です。

3月3日にスーパーチューズデーを迎える米国大統領選挙のスタート時期にはなんとしても相場を持ち上げる色々な対策を持ち出してくることが予想されます。

こうなると米株だけは、新型肺炎をもろともせずに上昇軌道を維持する可能性はありそうです。

ただし、国内株相場に関しては厳しい状況がのしかかってくる危険性があり、ドル円も国内株式市場との相関性を維持した場合、下落のリスクが高まることになります。

1~3月段階で相当な国内景気減速が示現か

総務省が2月7日に発表した家計調査によりますと、2019年12月の消費支出(2人以上の世帯)は物価変動を除いた実質ベースで前年同月比4.8%減と、3カ月連続のマイナスとなっており、10月に実施した消費増税のネガティブな影響がはっきりと指標に登場するようになってきています。

政府も日銀もひたすら増税による景気減速を否定していますが、実際には今月17日に発表予定の10~12月の実質GDPですらマイナスに落ち込んでいる状況で、そもそも国内景気は外的要因と関係なくマイナスに沈み込んでいるようです。

そこに今回の中国発の新型ウイルス騒動が上乗せするように景気の低迷をもたらそうとしているわけですから、国内の景気減速は既に確定状態で下押しされそうになっています。

日経新聞が中国の新型肺炎騒動で世界経済への影響の試算をいち早く掲載していますが、EUのデータに基づくこの試算では中国での工業生産が100億ドル減少すれば、海外での中国部品に依存した生産や完成品の販売を67億押下げるという数字を出しています。

日本円にして1.1兆円の中国内の生産減少に対して7000億強の損失がでるという試算ですが、この数字を見てもいまや中国の主要産業ともいえる自動車生産を考えますとかなり大きな数字がこの1~3月だけでも失われてしまいそうな状況です。

昨年の中国の自動車生産は2570万台程度で一昨年からすでに7%も減少しており、ウイルス感染がなくても経済はピークアウトしていますが、仮に今年この生産台数が維持できたとした場合には1~3月の武漢肺炎の影響でまともに工場の操業ができなかった場合には630万台程度の生産が不能になり、車1台あたりの販売価格が200万円とすれば、それだけで12.6兆円もの金額が減少することになります。

高額車両が販売されやすい中国国内では、実態の損失はそれをさらに上回ることも十分に考えられそうです。

これが3ヶ月ではなく半年に及べばそもそも需要が減退しますから、20兆円や30兆円の自動車生産の縮小する可能性は十分にありそうです。

こうなると日経の試算レートを使えば、全世界でも9兆円から18兆円ぐらいの影響は簡単にでそうな状況で、さらに自動車部品、IT製品と分野を広げて減額規模を算定した場合には莫大な数字が失われるリスクが高まります。

こうした状況では韓国、米国も大きな影響を受けるとされていますが、特に自動車産業の分野では国内生産している車種にも中国で生産される部品が数多く利用されているためにサプライチェーンの寸断で国内での自動車生産も遅滞をきたしかねない状況になっています。

日本株は自律的に下落の道をたどる危険性

米国株は堅調性を維持したとしても、経済の先行きを表す先行指標としての日経平均がここから大きく上昇することはあまり考えにくく、中国の経済原則と連動するように下落の道を歩むリスクについては覚悟する必要がありそうです。

またドル円についてもテクニカル的には上値を追い越しそうな気配は感じますが、実態景気と株価の下落を考えると下方向に動き円高が進むことも考えておく必要がでてきています。

証券業界ではここから日経平均が上値を試すと予測する向きが非常に多くなっていますが、実際は全く逆の事態に追い込まれる危険性が高いことは認識しておくべきでしょう。

突然降って沸いた今回のコロナウイルス起因の肺炎騒動は、当初の妙な楽観的見通しをすっかり払しょくするほど危機的な時間帯に差し掛かっているかもしれません。