8月19日のNYタイムは7月のFOMC議事油脂が発表となり、市場が期待するような追加緩和措置を示唆する内容が織り込まれていなかったことから株式市場には失望売りが出ることとなり、ドルも一時リスクオフの買いが見られました。

しかし、20日以降は株価もすぐに回復し米株三指数はじり高を継続する展開となっています。

大きく上昇するのではなく、じり高でいつまでも上昇軌道を外れないという相場の上昇はかなり強いものがあり、そう簡単には大きく崩れないようにも見えることから、この相場に本当について行くべきなのかということが投資家にとってはかなり大きな問題になってきています。

一部の報道では、完全に史上最短で新型コロナの下落相場を脱して上昇軌道に乗ったという見方も強まっていますが、実はリアルな相場ではこれまでの市場とは異なるいくつかの状況が顕在化していることがわかります。

市場参加者はかなり偏ったもので構成される特殊な相場

市場参加者についてですが、8月は例年市場参加者が減るのが常で、今年の場合には給付金で潤っている米国の個人投資家がロビンフッドなどを利用して市場に雪崩れ込んでおり、個々の人々の運用資金はかなり少額てあるものの四六時中売買をするということもあって、取引量の25%から30%近くはこうした個人投資家による売買で生成されるというかなり特殊な状況に陥っており、しかもその状況が決して侮れないものになっていることが挙げられます。

また、今年も上場企業の自社株買いがかなり旺盛な状況で、この自社株買いも米株をかなり強く下支えしていることがわかります。

データ ドイツ銀行

米株三指数ともに強さを維持していて個別に見ていきますと、GAFAMが完全に市場をけん引しており、圧倒的な伸びはこの5銘柄によって実現していることもこの上昇相場の大きな特徴といえます。

時価総額ベースでいえば全体の20%近くを5銘柄だけで構成していて、異常といえば異常な世界でここが崩れ始めると猛烈な反転下落相場に陥る危険性がかなり高くなることは意識しておく必要があります。

大統領選挙年は9月から10月にかけての米株下落に注意

米国の大統領選挙までほぼ二か月強となりましたが、1950年からの大統領選挙年17回を調べて見ますと、実に14回がS&P500の相場は上昇していることが判ります。

例外だったのはITバブルの崩壊やリーマンショックなど3回だけで、通常はほぼ年間で1.6%程度の上昇が示現していることになります。

ただし気をつけなくてはならないのが9月10月の相場で、シーズナルサイクルとしてはほぼ8割以上がこの時期に暴落ではないものの値を下げていることです。

これからの1か月強の時間帯は選挙年のアノマリーから言えば、株価が明確に下げる可能性があることも一応は頭に入れておく必要がありそうです。

もちろん例年の動きを今年もトレースするのかどうかはまったくわかりませんが、そうした調整が起こる危険性があることはしっかり理解して取引に臨むことが重要になります。

個人投資家主体の相場は下げ始めると予想以上に下げやすい

ロビンフッダーと呼ばれる米国の個人投資家は、注目する株が下がれば買い向かい上がれば利益をとってまた買い向かうというほとんどFXのスキャルピングに近いトレードを延々と行うそうなので、相場も下がりようがないのが実情のようで、経済指標も企業業績も一切関係なしという相場が延々と続いています。

さながらオンラインゲームのような感覚で売買をしているわけで、相場がなかなか下がらないのはこれが大きく働いていると分析する市場関係者も増えています。

ただし、個人投資家の特徴として売りが嵩み始めると市場参加者がみな売り場に殺到する流動性パニックを引き起こしやすく、その動きに投機筋のアルゴリズムが連動して拍車をかけることになりますから、想像以上に相場が下落する可能性が高くなり、またGAFAMのように特定5銘柄だけに集中して投資が行われていると、崩れる時も驚くほどのスピードで下落していく危険性を考えなくてはなりません。

この9月はまさにそうした下落リスクの高い時間帯を通過することになる点は十分に認識してトレードする必要がありそうです。

迂闊に売買しているととてつもない下落相場に巻き込まれかねませんので、やはりストップロスを入れるなどの安全対策で資金を闇雲に減らさない努力が必須の状況です。