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1月19日(日本時間では20日の未明)、イエレン新財務長官の上院指名のための公聴会がコロナ禍ということでネットを通じて開催されました。

バイデン政権で財務長官を拝命することとなったイエレン前FRB議長は、追加経済対策が必要とバイデンの政策をエンドースする発言を行っています。

大規模な財政策の実施を強く容認することとなり、かつての部下であるパウエル現FRB議長とのカネバラまきコンビが現実のものになることを示唆することとなりました。

この会議を見た市場関係者の多くが、バイデン政権でも引き続き緩和措置が大きくとられることで、株価は当分上昇軌道に乗るものと感じたはずで、米株はじり高が続く動きとなりました。

為替に関してはトランプ政権とは異なる意向を示唆

イエレン氏は為替政策に関する質問に対しては、「米ドルや他の通貨の価値は市場により決定されるべきだ。市場は景気動向を反映するよう適応し、おおむね世界経済の調整を促す」「米国は競争上の優位性を得るために通貨安を後押しすることはない」「他国によるそのような取り組みには反対すべき」と言った発言をしていますが、事前に開示された要旨をほぼそのままなぞる発言で余分なことは一切口にせずに公聴会を終えています。

この中でトランプ政権と若干なりとも姿勢が異なるのは、無理やりドル安にするのではなくあくまでも市場の原理で決まった水準を重視するということで、これがドル高に姿勢を変えることになるのではという市場の見方を引き出すこととなっています。

ただ、歴代の財務長官が口にする強いドルを堅持することが国益に叶うといった強力な発言はしておらず、決定的にトランプ政権とは異なる政策になることを示唆した様に見えないかなりオブラートに包んだ言い方で、言質をとられないようにしたのではないかという見方も広がっています。

財政赤字が悪化するとドル安にするのが歴代米国内閣の決まり

トランプ政権終了時の米国の連邦債務は既に日本円にして3000兆円を超えており、それに今回の新型コロナ対策の追加経済政策200兆円が上乗せになり、さらにオバマケアの完全実施、インフラ整備の追加などがでればバイデン政権下での債務はさらに大きくなることはもはや避けられない状況です。

80年代のレーガン政権時にも双子の赤字が非常に話題になり、当時連邦債務はたった100兆円で今やその30倍近くに金額が膨らんでいることを考えますと、どこかの時点で貿易というよりな国の赤字を減らすためにドル安を強く推し進めてくる可能性はありそうで、ドル高容認の姿勢をとるイエレン氏の姿勢がいつ変化するかにも注目が集まりそうです。

イエレンの意向は市場には相当浸透していますが、ファンド勢はそれにも関わらずドル売りに動くところが多く、本当に新政権誕生でドル高が示現することになるのかどうかにも関心が集まるところです。

トランプ政権は中国やベトナム、スイスなどを為替操作国として認定して自国通貨安を積極的に叩く動きにでていますが、政策としては無理やりドル安に持ち込むようなところまでは及んでおらず、イエレン新財務長官のもとでさらにドル高を容認する動きが強まるのかどうかは市場も懐疑的な部分がある状況です。

いずれにしてもここから半年位の新政権のオペレーションをみないことにはどうなるかはよくわからない部分もあり、イエレン新長官の手腕が大きく試される時間帯が到来することになります。

イエレンといえばずっと学究肌で学問の道を歩み地区連銀総裁からFRB議長に任命された典型的な学者です。

ムニューシンやかつてのECB総裁のマリオドラギのように、ゴールドマンサックスで実際に金融ビジネスの指揮をとっていた経験があるわけではありませんから、果たして実務面でどこまで機動力を持った采配を行えるのかがもう一つの関心事となりそうです。