今月に入ってから米国10年債金利が急激に上昇をはじめており、17日には一時的に1.3を超える勢いになってきています。
先週後半から金利は徐々に上昇を始めていましたが、今週になって急激にその動きが加速し始めている状況にあります。
市場では米国の景気が回復してきていることから徐々にインフレが進み始めており、それが金利の上昇に繋がっているのではないかといったかなり楽観的な見方が強まっています。
ただ、債券金利の上昇は非常に様々な相場に影響を及ぼすだけにそんな楽観的な見方で済ませておくわけにはいかず、ここから債券金利がどう展開するのかが非常に注目される状況になってきています。
このまま債券が売られ金利が上昇すれば株価にも深刻な影響
株や為替の売買を行う個人投資家にとっては、債券金利が1%程度上昇してもそれほど驚くべきことではないといった認識が強いわけですが、実は債券市場では金利の上昇は非常に多くの商品に影響を与えることになるため相当な注意が必要です。
まず米国債でいえば、金利の上昇は価格の下落を意味するものですから、既に保有している投資家はバランスシート上で価格の悪化が顕在化することから、米債を手放す動きを加速する可能性が高まります。
日本国債・JGBの場合は保有がほとんど国内の投資家ですし、その多くを既に日銀が買い取って保有していますから価格変動は殆どありませんが、米債の場合にはかなりの部分を外人投資家が保有していることから、一気に売りが加速することになればさらに金利は上昇することとなります。
FRBも日銀同様にイールドカーブコントロールを行うことになると思われますが、そもそも短期金利はコントロールできてもそれ以外はほとんどコントロールできないのが実情で、あらためてFRBの手腕が試されることになるわけです。
また、債券金利上昇は株価にも大きな影響を与え株は売られやすくなります。
2013年FRBの当時のバーナンキ議長は突然QE・緩和措置の終了を宣言しましたが、その瞬間に株価が大きく売られて相場は暴落するという非常事態に陥りました。
その位金利の上昇は株価にも影響を与えることはしっかり認識しておかなくてはなりません。
ジャンク債などリスク債券の金利にも大きな影響を与えることに
債券金利はほぼゼロに近い所を推移してきましたから、リスクの高いジャンク債などにもイールドハンティングで資金が回ってきたわけで、米国債自体の金利が上昇することになればこうしたジャンク債も売られることになり、急激に信用収縮が進む危険性もでてくることになります。
市場では米10年債金利は2%程度まで上昇する可能性を織り込みはじめていますが、本格的なインフレが示現する様になればそのレベルで止まるかどうかはわからず、本格的なインフレ到来では無制限緩和措置も終了せざるを得ない事態に追い込まれる危険性が高まります。
現在カネ余りから実態経済と全く関係なく上昇を継続している米株相場にも大きな変化が現れる可能性は高く、今後ここから米10年債金利がどのように推移してくるかは相当注意深く見守る必要がでてきている状況です。
実際この金利の上昇でドル円はすでに106円に突入するような動きを見せており、為替にも大きな影響を及ぼしはじめています。
今のところ急激なドル高はほかにはあまりはっきり示現していませんが、これが続けばドル円は107円方向に向けて突き進むことも十分に考えられます。
2022年までは低金利政策を継続させると宣言しているFRBですが、こうした市場状況の変化に合わせて何か政策を変更せざるをえなくなることも考えられるだけに、金利の動向は非常に重要なファクターになってきています。
個人投資家も最新の米債金利の情報を常にチェックしながらトレードをしていかなくてはなりません。