米労働省が6日発表した7月の雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比94.3万人と市場予測より高く、さらに6月の93.8万人を超える伸びとなったことから市場は好感しドルが大きく上昇しました。
ドル円は事前期待も高かったですが、指標発表をうけて110円台に返り咲き瞬間的には110.360円台まで上昇しました。
しかし週末、かつ市場参加者が少ない時期とあってリカクでの下落もありそれ以上は伸び悩むこととなりました。
問題は果たしてこの動きが週明けも継続できるのか、今回の結果だけですぐFRBがテーパリングを開始するとも考えにくく、一過性の上昇にすぎない可能性も高まっています。
市場はかなり拙速なテーパリングを期待している模様
ここ最近のFRBではクラリダ副議長がテーパリングについてかなり前倒し感のある発言をしたことから、8月のジャクソンホールでパウエルがそれを暗示するような発言をするのではないかという妙な期待が高まっています。
ただこのコラムでも既に触れている通り、肝心の議長人事がパウエルからブレーナードへと切り替わればジャクソンホールでのパウエル発言は全く意味のないものになるので、これだけでテーパリングを期待するのは相当難しく、ここからは相当注意が必要な時間になるでしょう。
また利上げに関しても実際に行われるのは中間選挙後の2023年になる可能性が高く、足もとのNFPの数字を見てドル高を期待はしない方がいいかもしれません。
問題は9月に失業手当の上乗せが切れてから
米国では今年の9月にトランプ政権から続けてきた新型コロナ対応失業給付金の上乗せが切れます。
これまでは働くより給付金をもらったほうが可処分所得も多くなるので、長期にわたり失業手当を取得してきていましたが、上乗せ給付の終了で果たして人々が労働市場に戻ってくるのかどうか大きな注目点となります。
一般的には給付が上乗せされるとさらに継続を求める声が大きくなるので、コロナで労働意欲を失った人々がまた職を探して労働市場に戻ってくるのかどうかはあまり期待ができません。
また一部の単純労働者の職種以外は時給の高いところを選択しようとする動きも明確に表れており、必ずしも需要と供給が適切ではないという指摘も増えています。
米国の雇用統計における非農業部門雇用者数の基準は週に1回1時間働くと一人とカウントされるのでかなり緩く、本質的な需給を満たしていない可能性も考えられ、引き続き8月、9月のNFPの推移を見守る必要があります。
そうなると年末までの早い時期にテーパリングが実施されるという観測は厳しく、FRBの主なメンバーではない人の発言に影響を受けない方が良いでしょう。
FOMCは全会一致で政策決定をするのが特徴なので、やはり議長がどう会議をリードするかが非常に重要であり、足もとでは明確に政権の意向を正確にトレースすることが求められています。
FRBが独立した政策決定組織であると信じる人も多いですが、実際には相当政権との親和性が発揮されているのが現実で、テーパリングの議論もやっている感を出しているだけかもしれません。
市場は当分雇用統計の結果で相場の上下動が伴いそうですが、実際にはFRBの政策決定はそんなに柔軟なものではないという事実もしっかり認識しておきたいところです。