ドル円はとうとう週でも50銭の値幅がないというきわめて少ない値動きを継続中ですが、この1年あまりインターバンクを中心に市場関係者からささやかれ始めているのが国内の経済、産業構造の変化がドル円を下げさせなくなっているのではないかという話です。

貿易立国ではなくなったこの国

日本といえば原料を輸入して商品や加工機器を製造し輸出して外貨を稼ぐという産業構造が強くイメージされ、実際80年代から90年代までこうした産業が経済を大きく支えてきたのは紛れもない事実でした。しかし近年では貿易黒字というものが大幅に減り輸出企業はかなりの部分を海外生産に依存するようになってきており、結果として輸出額とリンクする形でドル円の売りが徐々に減り始めているのが足元の相場になってきているようです。2011年に東日本大震災があってからは原発の代わりにエネルギー輸入が増えて貿易赤字が拡大し、これがドル高円安を招いた時期もありましたが、この問題が一息ついてからも輸出に伴うドル円の円買い需要というのはコンスタントに減りつつあり、状況がかなり変化していることが窺われます。

M&Aがもたらすドル円のドル買い需要

貿易黒字が減ったのと相反するように示現し始めているのが国内企業の対外投資の拡大です。ここのところあらゆる産業、業界でM&Aによる海外企業の買収が進んでおり、買収金額の支払いのためにドル円のドル買い需要がひっきりなしに続いているのが本邦為替市場のひとつの特徴になってきています。たとえば昨年の武田のUK企業シャイアーの買収などはその典型例でこちらの場合はある程度ポンドでの支払いがでた模様ですが、当初はブリッジローンなどでつないでその後コストを下げるためにドル円をコンスタントに買い向かうという動きがでたことからドル円は2018年たしかに大きく下げることもなく終了しています。もちろん武田の案件だけがドル円を支えたのではなく国内企業が矢継ぎ早に海外企業のM&Aを行ったことがドル円の買い需要を旺盛にしたものと思われます。とくにM&Aのドル買い需要はできるだけ安く買い付けをしたいことから下値にオーダーを置いて買い向かい、期日が迫ると高くても時価で買い進むというのが大きな特徴のようで、これがドル円が下落しても強力に値を戻す原動力になっているのはどうやら間違いがなさそうな状況です。

国内の経済・産業構造変化が確実にドル円に影響を与えている
https://www.asahi.com/articles/photo/AS20190108004113.html

本邦金融機関・機関投資家の外債購入需要もドル円に影響

さらに国内では長短金利差がなくなってしまったことから投資先に窮した邦銀や生保などの機関投資家が積極的に外債、とくに米国の社債、CLO、ジャンク債市場などに資金を投入する動きを見せていることからドル円需要もそれにともなって旺盛な動きとなっているようです。本来ならこうした投資の場合ヘッジのためにドル円は円買いをしておくべきなのですが、利益がでないということから見切りで裸のままドル円を買う動きが顕在化していることもドル円を下げさせない要因となっているようです。ただしこちらは実需のようにみえますが、債券が大幅に下落したり償還を迎えればどこかで円転のタマとして機能しますから一時的なものに過ぎない点には注意が必要です。

この3つの材料による需給から本邦市場では常にドル円が買われる傾向があり、また為替市場としてもユーロが経済的な問題から買われにくい状況にあるため、リスクオフになってもリスクオンになっても常にドルが買われる状況からドル円は妙に動かない、その割には大きく買いあがらないなかなか微妙な相場を示現していることがわかります。人口減少や高齢化といったこの国の問題、また日銀の金融政策n影響を受けた金融機関の投資行動などが微妙に為替に影響を与えているということはあらかじめ理解して売買をする必要がありそうな状況になってきていることがわかります。FXはやはりファンダメンタルズの影響を受けていることを改めて認識させられる次第です。