FRBのパウエル議長は4日の夜(日本時間5日午前9時)、CBSニュースの「60ミニッツ」でスコット・ペリー氏のインタビューに応じました。
議会証言や記者会見にはよく登場するパウエル議長ですが、このような民間の番組に出演しインタビューに答えるのは異例で、多くの関心が寄せられました。
事前に収録されたこのインタビューの中で、パウエル議長はインフレ率が2%の目標に向けて鈍化の道筋にあることを確認するため、より多くの経済データを見たいという意向を明らかにしました。
パウエル議長は「あまりに早く動くこと(利下げ)の危険性は、仕事がまだ終わっていないことにあり、過去6カ月間に得られた良い数値はインフレがどこに向かっているかを示す真の指標ではないことが判明している」と述べ、インフレが終焉したと見なし簡単に利下げへ転じることへのリスクを口にしています。
また最も賢明な方法としては、時間がかかってもインフレ率が持続可能な方法で2%に低下していることをデータで確認することだという考えも明らかにしています。
さらにパウエル議長は、3月19、20日に開催される次回のFOMCまでに、インフレの道筋がそのレべルに達する可能性は低いと述べ、早期に利下げに転じるつもりがないことを強調しました。
パウエル発言を受けアジア市場はビビッドに反応
この番組が放送されたのは日曜の夜であり、すでに5日午前中の取引が開始していたアジア市場では、顕著な反応が見られました。
番組の放送により、債券投資家たちの過剰な利下げの織り込みが浮き彫りとなり、結果的に米国債は下落する展開となりました。
劇的な政策変更の可能性は低いものの年内の利下げは否定せず
パウエル議長は、FRBの政策当局者が今年一年、金利見通しを劇的に変更するようなことはないであろうとも述べており、仮に利下げが始まったとしても短期間で急激な利下げを実施することはない意向を示しました。
参加者のほぼ全員が、年内に利下げを行うことで制限的なスタンスを縮小し始めることが適切だとしており、パウエル議長もその考え自体は否定しておらず、今年のどこかのタイミングに利下げに踏み切る可能性があることも認めています。
ただ、それをいかに適切なタイミングで実施するかが極めて重要であるとの考えを強調しました。
パウエル議長は、記者会見や議会証言の席で感情を露わにすることはなく、常に淡々と質問に答えることで知られており、FRBウォッチャーの間でも意外なファンを抱える存在となっています。
1月のFOMCが終了してすぐのタイミングで、多くの国民が視聴する夜の人気番組に出演し丁寧にインタビューに応じて見せたことも、FRBウォッチャーの間ではパウエル流の情報拡散戦略があるのではないかと見られています。
市場はFRBの利下げを無理やり織り込みに行く動きを見せており、昨年末には3月の利下げ確率100%という状況に陥ったものの、ここ1か月はFRB高官の多くが利下げの準備はまだ整っていないことをアピールしたことにより、利下げ期待は5割を切るところまで後退しています。
ただ、それでも利下げ期待を持ち出す市場参加者は多いため、今回番組出演という市場とのコミュニケーションの場を設けたのではないかという見方が強まっています。
市場の反応は、週明けのニューヨークタイムまで一巡してみないことには判断しづらい状況ですが、アジアタイムの反応は顕著でドル円は148円台に定着する動きとなっています。
各国の中央銀行における次回の政策決定会合は、3月中盤から後半の開催となっており、それまで政策変更は実施されないため、現状がどこまで維持されるのか注目されます。
今回のパウエル議長の番組出演は、一定以上の効果が得られた可能性は高く、今後の相場にどのように影響するかが気になるところです。