年初来から3月まで、安定的に推移していたドル建ての金価格が、ここへきて一気に上昇を加速させています。
特に4月に入ってからの上昇は凄まじく、すでにスポット価格は2337ドルを越えており、株価や債券などの相関、非相関を全く無視しまさに青天井となっています。
金の希少性はビットコインよりも高く、価格上昇の予測は非常に困難であり、需要と供給次第では今後驚くべき水準まで上昇する可能性もあります。
ドル建て金の価格は長年、米国および英国の中央銀行が市場に介入し、その価格が2000ドルを超えると価格の頭を叩き価格の上昇を抑制してきました。
この事実はすでに公然の秘密となっているものの、多くの市場参加者は2000ドルが価格の天井であるとの認識を持っていました。
しかし、最近ではそのような介入策も効果を発揮せず、市場の金買い意欲は著しく高まっている状況となっています。
この背景には様々な要因が指摘されていますが、結局はドル離れが金買いに繫がっているとの見方が有力とされています。
BRICSプラス各国は外貨準備を金に切り替えか
特に目立ち始めているのが、BRICSプラスの加盟国が外貨準備の一環としてドル買い、つまり米債買いを控え、代わりに金を購入するという動きです。
BRICSプラスには、ブラジル、ロシア、中国に加え、サウジアラビア、UAE、イランなどの産油国が加盟しており、これらの国々は原油供給において重要な役割を果たしています。
しかし、こうした国々はすでにドル建ての決済から完全に離脱しており、BRICS内で国際銀行間通信協会(SWIFT)を利用せず、ロシアが提供する独自の決済システムを導入し始めていると言われています。
足元では、米国がウクライナ戦争でロシアの資産を凍結・没収したことにより、反米意識が非常に高まっているのが実情です。
そのため、米国債を外貨準備として保有することは大きなリスクであるとの認識が広がっており、結果的に金への需要が増加しているとの見方が妥当なようです。
BRICSの間では、半世紀前に消滅してしまった金本位制に近い仕組みを再び導入しようとする動きが浮上しており、金に対する需要の変化が明らかになっています。
通常、金価格の上昇はドル安をもたらし、逆にドル高なら金価格は低下しますが、現状ではドル高であるにもかかわらず金価格は上昇しており、長年にわたり機能してきた相関関係は失われつつあります。
過去を振り返ってみると、各資本市場が相関性を無視して独自に上昇するというのは、バブル期の終盤に見られる典型的な現象であることがわかります。
最近の市場動向も、バブル期の終盤の状況と何か繋がりがあるかどうかが気になるところです。
イランが参戦すれば米ドル離れ加速か
現在、市場ではイランがイスラエルに対し報復攻撃を行い、本格的な戦争へと突入する事が懸念されています。
中国の仲介によりサウジアラビアとの国交を回復し、BRICS加盟国との連携を強めつつあるイランは、かつての独立した立場からは変化しつつあります。
このまま反イスラエルの機運が高まることになれば、その後ろ盾となる米国へのネガティブな意識も高まることになり、結果として米ドル離れと金需要増加はさらに加速するものと思われます。
現状では、金価格がここまで高騰し各市場の相関性が大きく崩れた理由は不明であり、アナリストたちの間では様々な憶測が飛び交っています。
しかし、金融市場における金の立場は変化しつつあり、近い将来、何らかの大きな変化が示現する可能性は認識しておきたいところです。
金が買われドルが売られるということは、為替市場にも大きな影響が及ぶことは間違いないため、想定外の市場状況にも対応できるよう備えておく必要がありそうです。
相場の変動理由は、後になればしっかりと理解することができますが、相場の急変を早期に察知し対応できる人は極めて少ないのが現状です。
個人投資家としては迅速な情報収集を怠らないことが重要なポイントとなりそうです。