Photo Newsweek 空爆を受けたシリアのイラン大使館

 

今月1日、シリアにあるイラン大使館がイスラエルとみられる空爆により、イラン革命防衛隊の司令官らが殺害されるという事件が発生しました。

これに対しイランが報復攻撃を行うのではないかとの報道が出たことにより、先週木曜日のニューヨークタイムは、株も為替も大きく値を崩す展開となりました。

自民党の裏金問題が大きく取り沙汰されている日本でも、ここからイランが地上戦に参入してくるのではないかと懸念の声が高まっています。

イランはイスラエルの重要な拠点に向けて、無人機と巡航ミサイルを発射し、共同攻撃を計画しているとの報道もあります。

米国市場はこれまで、中東の地政学リスクを気にせず「遠くの戦争は買い」とばかりに株買いに血道を上げてきました。

しかし、もし今後イランがイスラエルと衝突することになれば、原油価格が作為的に上昇し、金融市場に様々な悪影響が及ぶことは間違いありません。

全面戦争ならドル円は円高にシフトも原油価格の暴騰でドル高に反転か

米株は、中東の地政学リスクが高まった4日に大きく値を下げる展開となりました。

翌日には日経平均も下落し、ドル円は151円台から150円台後半にまで下落するというリスクオフ相場となりました。

中東情勢は常に原油価格と密接な繫がりがあるため、イランが参戦しこのまま事態が悪化すれば、BRICSを通じてアラブ諸国の連携強化が図られ、その背後にいるロシアが旗振りをすることで、原油価格が大幅に上昇する可能性があります。

西側諸国でエネルギーインフレが加速すれば、FRBやECBは利下げどころの話ではなくなり、経済に深刻なダメージが及ぶことは間違いありません。

米債金利の上昇はドル円の上昇に繋がるため、週明けに発表を控える月次CPIおよび月次PPIの結果に大きな注目が高まっている状況です。

中東からの原油輸入に依存する日本へのダメージは必至

全面戦争となれば、イランがホルムズ海峡の閉鎖に踏み切る可能性は極めて高く、中東からの原油輸入に依存しきっている日本は、最も大きな影響を受けることが予想されます。

欧州は事実上地続きとなりますが、極東への原油輸出はホルムズ海峡経由となるため、70年代初頭に発生したオイルショックが再来する可能性さえもあります。

そうなると日本も、米欧同様、エネルギーインフレが加速するため、緩和継続などと悠長なことを言っている場合ではなくなります。

1ドル151円を超える水準で原油価格が上昇するともなれば、国内でのガソリン価格は250円や270円まで高騰することになります。

そうなると、これまで少しずつ修正されてきた金融政策が一変する可能性もあるため、今後の先行きを改めて予測し直す事が必要となりそうです。

ドル円は中東情勢の緊迫化による再下落に注意

先週1週間のドル円の推移

 

先週は、中東情勢が緊迫し下落したものの、週末の雇用統計で市場予想を上回る結果が出たことから、ドル円は151.600円まで値を戻しています。

今週は中東次第でさらに下値を試す可能性もありますが、152円を越えれば財務省による介入を警戒しつつ、トレードシナリオを持つことが重要になりそうです。

為替介入に関しては、岸田政権からエネルギーの輸入コストを抑えるための円安阻止を強く要請されることは間違いないため、153円以上の上昇が容認される状況にはないものとみられます。

152円でストップをつけ、半ばまで跳ねあげたところでいきなり介入に踏み切る可能性も視野に入れておきたいところです。

米国の指標発表により急騰した場合は、翌日のオセアニアタイムで介入が入ることも考えられるため、利益が出た時点でポジションを手仕舞う準備をしておくと良いでしょう。

4月に入り、全体的に膠着相場が続いていますが、週明けに突然これまでとは違う方向に動き出す可能性もあるため、いつも以上に慎重なトレードを心がけたいところです。