今週12日からECB理事会を皮切りにいよいよ主要3地域の中央銀行政策決定会合が開催されることとなります。市場の予測ではECBも一定の緩和措置に踏み込むことが予想されていますし、18日(日本時間19日午前3時)のFOMCについても少なくとも0.25%の利下げはほとんどの市場参加者が織り込む状況でいまさら止めるわけにはいかないほどの状態になってきています。一方日銀の黒田総裁もこうした主要国の緩和措置に対して何もしなければ円高だけが進行することから無理やりマイナス金利の深堀を示唆する発言をしはじめています。
リーマンショックと呼ばれる米国の金融危機は当時グリーンスパン元FRB議長が100年に1度の世界的な経済危機であるなどといったことから主要国の中央銀行が未曽有の緩和を継続することでこの経済を支えるというこれまでの資本主義では見たこともない手法が導入され、株価はきわめて人工的に支えられるようになってからこの9月の15日のリーマンショックで丸11年が経過しようとしているわけですが、もはや中央銀行のこうした緩和政策だけで相場を維持すること自体に無理が出始めていることを強く感じる次第で、これがどのタイミングで一斉に崩れることになるのか本当に心配しなくてはならないタイミングになってきていることを痛感させられます。
主要国緩和競争再開の図
米欧は一旦出口に向かったものの結局出られないままに緩和の世界に逆もどりしていることが明確になってきています。イーグルスの名曲にホテルカリフォルニアというのがありますが、この歌詞にでてきているように中銀は緩和にいつでもチェックインできるようになっていますがもはや出口に向かうことができない状況になっていることがうかがわれます。
また、これまでは比較的連携して緩和措置をとってきた主要国の中銀でしたが、トランプの出現ですでに連携から緩和競争の域に達するようになっており、通貨安競争も一段と厳しいものになろうとしてる状況です。ドラギ総裁はもはや退任を控えてレイムダック化していますが最後の置き土産として緩和を実施する可能性は強く、もはや主要国の緩和競争、さらに言い換えれば通貨安競争が本格的に始まっていることを意識させられるタイミングとなっています。
日銀のマイナス金利は本当に相場にプラスに働くのか
日銀は米欧の中銀の緩和政策の実施を受けて、なんらかの緩和で足並みをそろえることを強いられています。このまま何もしなければ相対的な関係からマイナス金利を深堀することが現実のものになりそうで、ここまでのマイナス金利でもなんの成果もあがらなかったものを加速させようとしていることが感じられます。
9月の主要中央銀行政策決定会合ではしんがりを務めるわけですから後だしじゃんけんのように政策と調整することも可能であることは間違いありませんが、6年半やってもなんら結果を見いだせない中で本当にマイナス金利をさらに進めることが効果的な政策になるのかどうかについては相当疑問が残る状況と言わざるをえません。
2%の物価安定の目標もモメンタムは維持されていると説明していますが、本当にそうなのでしょうか。また個人消費、設備投資という内需は比較的しっかりしていると説明していますが、現実の経済はこの見方とかなり乖離しはじめており、マイナス金利を深堀したりETFの買入を増額するようなことをしても増税による景気の下振れを支えきれるとはとても思えない状況です。
その一方で日銀はJGBの長期金利が下げ過ぎていることから国債の買い入れを調整するなどして金利の下げ過ぎにも気を遣う始末で、そもそも長期金利は中央銀行が制御できないはずのものだったのにもはやなんでもありで怖いものなしの政策領域に踏み込み始めていることがわかります。
中銀緩和の賞味期限切れがいつ到来するかが非常に大きな問題
世界最大のヘッジファンドのレイダリオは中央銀行による政策限界がまもなく訪れ、せいぜい経済はもってあと1年といった厳しい見立てをしていますが、相当な素人がみていても金融緩和で無理やり株価の下落を抑えたり過分に上昇することを画策すること自体が相当無理のあるものになってきており、どこかで相場を制御できなくなるタイミングが必ずやってきそうなところに迫っていることを強く感じさせられるものがあります。
米国や欧州の景気の問題もさることながら本邦は10月の増税を境にして相当景気が落ち込むことが予想されるだけに日銀の政策だけでは支えらなくなり独自に景気が下振れしてくることを非常に危惧すべき段階に入っていると思われます。9月の相場はその途上で日本株は妙に買いあがるような動きを示現していますが、これがすっかり巻き戻るリスクについても十分に意識しておく必要がありそうです。