10月末から11月になっても、米中の通商協議の行方をめぐる報道のヘッドラインで、相場は激しく乱高下する状況が延々と続いています。
米国側が比較的楽観的な発言をすると、アルゴリズムがいち早く反応して上昇する相場は、中国系メディアから逆にかなり否定的な内容が報道されると一気に崩れ株は下落、為替はリスクオフの円高にシフトするの繰り返しで、チャートで取引をする投資家にとっては実にやりにくい相場になってしまうのが実情です。
しかしそんな米中関係も民主党のある人物が登場して人気を高めていることから、大きな変化がみられそうな状況になりつつあります。
それがエリザベスウォーレン上院議員の存在なのです。
原理主義者のウォーレンは中国にとってはトランプよりも始末の悪い存在
トランプの貿易赤字解消という政策も、これまでの米中関係から考えれば無茶苦茶な部分が多いことは事実で、中国政府としてはのらりくらりと交渉を継続させ、結果的には2020年にトランプが再選されるかどうかを見計らってその先の交渉をどうするか決めるつもりであることは間違いないようです。
トランプさえいなくなれば状況が大きく変化する可能性がかなり高いわけですから、戦略としては間違っていないのでしょうが、ただここへきて民主党の対立候補がエリザベスウォーレンになろうとしていることで、どうも中国の考え方が変わりつつあるという報道が米国のメディアにもかなり表れるようになってきています。
このウォーレン女史はハーバード大の法律の教授から上院議員になっていますが、とにかく頭はめっぽう切れるようで米国内ではGAFAの解体をいち早く口にしていますし、最近では9月に突然起きた米国短期のレポ市場の金利上昇をめぐって、JPモルガンが仕掛けてたのではないかとの質問状をムニューシン財務長官に送り付けるなど、相当的を得た疑義を次々と米国内で展開し始めています。
そのほかにも次々的を得た指摘を行っており、米系企業の自社株買いについても早晩議会が一定の禁止法案を持ち込みかねない状況で、米国の資本主義もトランプとは全く別の方向に大きく変化する可能性がでてきていることがうかがえます。
米国の内部がこうした状況で混乱することは中国にとっても決して悪いことではないのでしょうが、逆にその矛先が中国に向いた場合、もっと原理原則から厳しい対応へとシフトすることは間違いなさそうで、トランプのように金で解決ができない存在であるだけに、対中政策はさらに厳しいものになるリスクが突然高まることになりかねません。
これまでの「のらりくらり」を一旦止めて、トランプが大統領であるうちに、ある程度交渉を完結しておいたほうがプラスになるのではないかといった発想も中国側には高まっているようなのです。
たしかにこの発想は十分にありうる話で、特に農産物に関しては豚肉を含めて中国が実際に困っている領域だけにあっさり調印ということも十分に想定できるところにさしかかっているようです。
11月に第一フェーズの調印ができるかどうかが大きなポイント
チリで開催予定だったAPECの会議はチリの国内情勢悪化から見送りとなってしまい、トランプと習近平が公式的に顔を合わせる機会が失われてしまったことから、年内の合意調印が難しくなったのではないかとの見方も強まりましたが、直近では市米国アイダホなどで調印する案も登場しており、第一フェーズに関するかぎり調印が実施できそうな可能性が高まりつつあります。
実際に正式決定を見るまではもちろん予断を許さない状況であることは間違いありませんが、闇雲に引き延ばして万が一、民主党ウォーレン政権が誕生する様なことになれば先送り大失敗になりかねないだけに、中国が軟化することは十分に考えられる状況になってきているというわけです。
この正式決定報道がでれば株はさらに上昇、為替もドルが買われてリスクオン相場へとシフトすることになりますから、11月相場では上昇要因のもっとも大きなものになるだけに非常に注目されるところとなってきてます。
中国がここからどこまで転向してくるかは依然として不透明でありますが、ウォーレンの存在と支持率が表面化するにしたがって、今後も大きく変化するかも知れないことはあらかじめしっかり認識しておくべきでしょう。