本格的に11月に入った相場は、米中の通商協議の合意を示す中国政府の発言がニュースのヘッドラインに載ったことから、株もドル円も急激に上昇することとなり、いきなりリスクオン相場が現れました。

しかし、週末になる8日のNYタイムには、トランプ大統領がまだ中国とは合意していないと言い出したことから、株式市場でNYダウは100ドル以上の下落を果たすこととなり、終盤値を戻してなんとかプラスで週の取引を終えています。

こうなると、11月の相場は当面米中の通商協議の合意がどのタイミングで行われるのか、また12月15日に迫った追加関税の実施が撤回されるかどうかが、非常に大きな相場の材料となりそうです。

確かに表面上は、この関連の報道にアルゴリズムが敏感に反応することから、プラスに働くといきなりリスクオンが加速しますし、ネガティブな内容が飛び出すと必要以上に売り込まれるのが足元のアルゴリズム主導相場の大きな特徴となっています。

しかし冷静に考えてみますと、10月に始まったFRBによる隠れQE(通称Not QE)と利下げの効果が米株市場に大きな資金の流入をもたらしているようで、年末ぎりぎりまでこの相場が続くかどうかは今一つはっきりしないものの、少なくとも感謝祭の前後あたりまでは、今の好調相場が継続しそうな雰囲気が濃厚で、売り向かうのはリスクが伴いそうです。

ドル円は110円トライか

ドル円日足(白線は200日移動平均線)

ドル円は109円台に乗ってきて、とうとう週の終値でもほぼ過去1年間の市場参加者のコストになる、200日移動平均線を終値で明確に超えてきたことから、週明けではやはり上値を試すことになりそうです。

ただし、109円台は後半から予想通りかなり輸出勢の売り玉が並んでいることから、簡単に110円台を突破していくわけにもいかなそうな状況です。

すでに年末までの輸出勢の需要は消化されていますから、もっと先を見据えた為替の手当ということになるのでしょうが、果たして110円を超えられるのか、あるいは上値に限界がでるのかが大きな注目点となります。

さらにテクニカル的には、112円方向も十分に考えられますが、国内の機関投資家やGPIFでも109円台後半は売りに回るとされていますから、需給の関係だけからみてもそれほど上値は青天井とは言えない状況です。

ドル円は残念ながら、トレンドが出ているわけではありませんので、とにかく押し目で買って109円あたりで上昇できなくなったところでは、逆に戻り売りを繰り返すといった方法がワークしそうです。

ちなみに、109.500円にはノータッチオプションがあることから、かなりの防戦売りも登場しそうですが、こうした売りは下値で必ず買戻しが入りますので、時間が経過するとともに109.500円突破の可能性は高くなります。

引き続き下落リスクの高いユーロドル

ユーロドル日足(白線は200日移動平均線)

一方、ユーロドルの方も軟調な推移が継続中で、ファンダメンタルズ的にみても、欧州圏の経済に今一つ不透明感が漂うことから、どうしても戻り売り目線が強くなりそうです。

強気な見通しで有名なIMFは、欧州域内経済見通しについて下振れリスクの高まりを踏まえて、対策を実行できるように用意しておくべきであると、かなり厳しい見通しと警告を発していますが、ドイツからはそこまでのリスクはないと反発を受けています。

ただ、欧州経済をけん引してきたドイツ経済はかなり痛み始めているようで、特に主力の自動車輸出が想像以上に低迷し始めている点は見逃すことができない状況です。

週明けは11/12にドイツ・11月ZEW景況感調査、11/14にドイツ・第3四半期GDP速報が発表となりますので、このIMFの見方を上塗りするような結果が出た場合には、ECBによる追加緩和期待が高まり、欧州債の金利が低下することでユーロがさらに売り込まれるリスクが高まりそうです。

ユーロドルのほうは、日足の200日移動平均線が延々と上限になっていますので、引き付けて売りから入るトレードが相変わらず継続しそうな状況です。

為替相場全般に、市場を動かす大きな材料を通過し、BREXITも12月まで持ち越しとなってきていることから、注目材料はもっぱら米中の通商協議のここからの行方ということになりそうで、週明けもこのニュースヘッドラインで相場は上下にぶれそうな気配です。

ただ、第一弾に関してはその中身は大したものではなくなるにせよ、なんとか合意にこぎつけそうな雰囲気で、逆にこれがかなり相場に想定されている状況では、合意後には相場を動かすドライバーにはならなくなる点も注意しておく必要がありそうです。

市場全体は驚くほど楽観相場が続いており、多くの市場参加者がリスクオン相場を楽しんでいますが、果たしてこれが年末まで維持できるのかどうかは、はっきりよくわかりません。

突然逆の動きが市場に登場し始めたときにも、しっかり対応できるように、ストップロスやトレーリングストップの利用を考えておく必要があります。

過去にも、市場参加者総楽観相場が現れた時には、だいたい良いことが起きていません。
全く逆さまのシナリオというものも、意識しておきたい時間帯に入ってきていると言えます。