Photo USA Today https://jp.reuters.com/article/china-hongkong-us-idJPKBN1XU06O

足元では米中の通商協議がどうなるかに関連した報道に、AI実装のアルゴリズムが異常ともおもえるほど反応をすることから、為替相場は上げたり下げたりの繰り返しでFX投資家にとっては、きわめてやりにくい状況が延々と続いています。

中国政府はかなり悲観的なことを関係者が口にしたという報道が飛び出す中で、28日の感謝祭前に上海で高官の協議を開催するよう中国側から招待があり市場は楽観的な状況になっています。

ただその一方で、米国の上下両院議会はすでに香港人権法案を可決しており、トランプ大統領も自ら承認のサインをせざるを得ない状況に陥っている状況です。

これで承認を拒否しても上下両院で法案が通っている以上、10日前後で自然成立することになるわけですから、対中政策に厳しく対応しているトランプとしては、ここでサインオフを拒否するわけにはいかなくなっているというのが正直なところでしょう。

しかしこの香港問題は、クリティカルな米中の通商協議よりもさらに中国にとってはクリティカルな問題で、いわば内政干渉に近い今の状況に手をこまねいてみているわけにはいかないところまで事態は悪化していることが窺われます。

香港問題が米中通商協議の重大な足かせになる可能性

香港問題はまさに政治的なものであり、ファンダメンタルズからはいささか逸脱した感が免れませんが、中国にとってはきわめて重要な問題である一方、民主化を唱える米国にとってはこれまでの親中派を含めて反対意見が強いところが非常に大きな問題です。

もしかしたら、米中通商協議を破壊してしまいかねない状況に陥っていることが非常に気になるところです。

米国が香港人権法案にサインした場合には、中国が猛烈な反発をするのは目に見えていることで、こうなると米中の通商協議の第1フェースが一旦とん挫する可能性が極めて高くなったともいえるわけです。

特に中国にとっては重大な内政干渉となりますから、米国との通商交渉の一貫として手を緩めるといったことがまったく感じられない要件であることは間違いなさそうです。

トランプがこの法案にサインした途端、かなり厳しい状況が展開されることが容易に予想される状況です。

トランプにとっても支持率を支えるための大きなポイント

一方、米国トランプ大統領にとっても適当なレベルで中国を容認するような動きをさせた場合、オバマ政権と変わらないという有権者の判断につながることから、とにかく中国に対する対応は緩く動くことのできないものになりつつあります。

こうなると多少株価が下がるような事態に陥っても、トランプが思いのほか厳しく中国に臨む可能性はかなり高そうで、この感謝祭の休みの前後に決定的な問題に陥った場合にはことのほかのリスクオフになり、株とともにドル円もリスクオフの円高になる危険性を強く感じる次第です。

市場は妙に楽観的だが香港問題は想像以上に大きな問題

米中ともに国内問題を考えれば、香港の事案で深くもめている場合ではないことは間違いありませんが、習近平・トランプともに安易な手打ちをすることから失うものが極めて大きなものであるだけに、ここから簡単には両者ともに引き下がらない可能性がきわめて高くなりそうです。

特に政治的な状況としては、これまでの関係を超えた悪化状況になることが予想されるだけに、株も為替も相当な注意が必要になってきそうです。

足元では米国の株式相場はすっかり楽観的な状況に陥っていますが、確かにFRBがほぼQE3に近いような短期債の買入を行っていることで、資金はじゃぶじゃぶなところにあったとしても香港問題はまさに人権の問題であり、しかも体制変更にも絡むことですから、そう簡単には決着がつかないことになる危険性を十分に理解しておく必要がありそうです。

このあたりの話は為替からもっとも離れた内容ではありますが、為替相場にはもっともダイレクトに影響を及ぼす材料だけに避けては通れないものといえそうです。

米国は感謝祭で、この休みの期間中にネガティブ状況が進行した場合にはボラティリティがないだけに、想像以上に相場が下落する危険性があることも意識しておく必要がありそうです。

米国の株式市場はこの人権法案が可決されてからも、あまり大きく問題視しないまま相場の上昇を続けていますが、中国の反応次第でさらに米中通商協議がサインオフに至らずに年末を経過した場合には、相当な下落に見舞われるリスクがありそうで、ここからの動向に十分な注意が必要のようです。