海外の調査機関の調べでは世界の中央銀行の8割がなんらかの形で金融緩和を実施しており、どうやらこれが世界中の株式市場の資金を供給する大きな材料になっていることがわかりました。
足元での相場状況を見回してみますと、米国や日本はもとより、欧州圏でもスペインやイタリアなどの相場が堅調であり、アジアではデモで大騒ぎになっている香港でさえもハンセン指数は堅調で、政治的なリスクを全く意に介さない状況になっています。
結局、各国の中央銀行がとめどもなく流し込む緩和資金が確実に金融市場、とりわけ株式市場への株価購入資金として機能しているのはほぼ間違いないようです。
ただし株式市場が楽観視なのに対して、必ずしも為替市場はそれに連動した動きを見せていないところが気になります。
株価が完全に政治成果の材料になっている点も下落しない要因に
米国の株式市場は昨年末に急落したことから、トランプ政権がプランジプロテクションチーム、通称PPTを政権内に立ち上げてムニューシンが音頭ををとりながら、一切株価を下げさせない動きをとるようになっています。
これにはFRBのパウエル議長や、米国内の主要な大手銀行なども含まれていますから、官民一体で株価を持ち上げる作業を延々と行っており、もはや株式相場を下げさせない動きに出ていると言えます。
2020年の米国大統領選を控え、トランプ政権は是が非でも株価を下げさせずに、自らの成果として強調したい旨が強く伝わってくる状況です。
FRBはトランプ政権と独立した存在であることを、事ある毎にパウエル議長は強調しますが、このトランプの政治的相場を支えているのは紛れもなく、FRBで10月からはじめた月間600億ドルのTB(トレジャリービル)の購入は短期債に限っているので、QEではないとしながらもその効果は明らかにQEであり、9月末からの米株はほとんど押し目を作らずに上昇を続けています。
これまでは金融相場だったわけですが今や政治相場へとシフトしていることが強く窺われます。
今のところ、来年の2月までこの隠れQEは継続の予定ですから、現状から言えば迂闊には売り迎えない状況が延々と続くことになりそうです。
国内に目をやりますと、桜を見る会で窮地に立っている安倍政権は、さして支持率が下がらないことをいいことに、年明け早々にでも総選挙に打って出る可能性が否定できず、こちらも株価を支えるよう官邸がしきりに号令をかけていると言われています。
企業業績は悪化しているのに、なぜか国内も日経平均だけが上がり続け、下落の局面では久々に日銀がETF買いを行うなど、明らかに株価を下げさせたくないという政権の意図を感じる次第です。
株式市場の政治相場で一番割を食うのは米ドルという見方も顕在化
この意図的な政治相場の中でもっとも影響を受けるのは、結局のところドル円なのではないかという見方も市場に広がりつつあります。
ドル円だけ見ていますとよくわかりませんが、米ドルはポンドに対しても弱含みはじめています。また、ロシアルーブルがドルに対して上昇するなど、これまでにはなかった動きが見えてきているのが気になるところです。
トランプ政権はかねてより莫大な負債を抱えていることから、ドル安にすることでそのリスクを軽減し、借金を減少させようとしている狙いがありますが、大統領選を前にして益々ドル安を志向する可能性が高くなってきており、こうしたドル安傾向を歓迎する可能性があり、株とは裏腹にドルがここから下落していくことも視野に入れていく必要がでてきているようです。
パウエル議長は11月18日にトランプ、ムニューシンとホワイトハウスで会談し、景気や経済成長、雇用、インフレについて意見交換をしたことを明らかにしています。
しかし席上で、トランプからマイナス金利の話もでたという報道がでたことから、ドルは下落する動きが現れています。
相場の動きと政権からの情報発信もある意味でシンクロし始めている点が気になるところです。
年内、為替相場は12月中盤の米国の対中関税や、英国の議会選挙の結果を受けて大きく動く可能性が残されていますが、それと並行してドルが独自に下落の道をたどりはじめる可能性についても意識していく必要がありそうです。
足元で円はドルとの相関性が極めて強いことから、ドル安は円安になりやすく、結果としてドル円はあまり動かないことが多いわけです。
ドル自体が安くなれば、他のドルストレートの通貨ペアには影響がでるものと思われます。
日々ドル円だけ見ていますと、こうした動きがまったく感じられません。
しかし為替は、相対的な通貨間の強さの変化によって価格に影響がでるものです。注意したトレードが必要になるのは言うまでもありません。