FRBが正式に越年の市場用に日本円にして、53兆円の資金を投入すると公式に開示してから、米国の株式相場はとにかく資金がとめどもなく流れ込む状態です。

これまで上昇に乗り遅れた銘柄も、クリスマス前であるにも関わらず、必死に買いあがるという極めて特異な状況となりました。

本来であればすでに相場はクリスマス休暇に入り、市場にはAIしか残されない状況に陥るわけですが、週明け相場が果たしてどういう展開になるのかが非常に興味のあるところとなってきました。

CNNが毎日更新している恐怖と欲望指数は、20日の相場前に92までつける始末で、一旦91へと下落していますが、すでに相場は楽観的な極みに到達していることが窺えます。

Data CNN

だいたいこの指数が90以上をつけますと、相場の上昇は長くは続かないことがほとんどで、2018年の10月にNYダウが最高値をつけた時もやはり同じような状況でしたが、ちょうど1年前のクリスマスイブにはこの数字がたったの2にまで下落していたのは非常に印象的なであったといえます。

FRBはこのまま史上最大の緩和を続けていくことになるのでしょうが、果たして相場がそれにいつまでついて行けるのかが非常に大きな問題になりつつあります。

週明け相場はさすがに動かないものと思われますが、27日は欧米では事実上の新年の扱いになるため、とくに為替の動きが大きく変化することに注意したい時間帯となります。

ドル円はまったく米株についていかれない状況

ドル円4時間足推移

ドル円の直近の動きを見ますと、12月初旬につけた109.728円を超えるべく、英国の議会選挙の結果を受ける形で109.706円まで上昇しましたが、この上を超えていくことができず、ここ1週間ほどはほとんど上にも下にもいかない横展開で週の取引を終了しています。

110円にはかなり大きなノータッチオプションが存在しているようで、109.800円レベルから相当な防戦売りが出ているうえに、本邦の機関投資家も110円の手前では相当な売りを仕込んでいる模様で、現状の材料のない状態では110円を簡単に乗り越えていける状況ではなさそうな展開となっています。

またクロス円はリスクオフの動きになっており、ドル高、円高の綱引きのなかでドル円がほとんど動かないままクリスマス入りしてしまったことがよくわかります。

週明けについては、ほとんどこのまま動かないことが容易に予想されるところですが、27日に事実上の新年度になるとヘッジファンド勢もグローバルな投資を開始するために資金を海外に出していくことから、予想外にドル安が進むこともあります。

例年の状況で、週末金曜日から市場のセンチメントが一気に変化することにも注意が必要になりそうです。

今年に関しては、ドル円でフラッシュクラッシュのような動きがでることは考えにくそうで、売り方も買い方もこの正月相場には相当なリーブオーダーを置いていくことが予想されることから、下げてもドル円は軽微な動きになりそうです。

問題はクリスマスとなんら関係なトルコ情勢

Photo Reuters https://jp.reuters.com/article/turkey-usa-sanctions-incirlik-idJPKBN1YK075

欧州はほとんどクリスマス休暇で動かないこの時期ですが、トルコはなんらキリスト教とは関係なくこの時期を過ごすことから、米国とトルコの間のぎくしゃくした関係が大きく火を噴く可能性に注意が必要です。

トルコのエルドアン大統領は12月15日、米議会が100年も前のオスマン帝国末期のアルメニア人大量虐殺を認定する決議を可決したことに激怒し、トルコ議会も米先住民(ネイティブアメリカン)が過去何世紀かに虐殺されたことを“報復認定”するかもしれないと猛反発しています。

必要とあれば、インジルリク空軍基地とキュレジック基地を閉鎖するとも発言していることから、この年末にかけてトルコと米国の関係が相当悪化することが危惧されるところです。

為替の世界でいいますと、トルコリラの買いというのは世界的に見ても本邦の個人投資家だけが集中して行っているという特殊な状況となっていることから、このトルコと米国の関係悪化からいきなりトルコリラ売りが実現した場合、ほとんどロングしかない相場は大幅な下落を余儀なくされる可能性もあります。

スワップ狙いのロングを行っているポジションはしっかりストップロスを置くなり、年始まで一旦利確してお休みするなりの適切な措置が求められることになりそうです。

また、北朝鮮の自称人工衛星(大陸間弾道ミサイル)が25日までにクリスマスプレゼントと称して発射された場合には、着弾地点によっては大騒ぎになるリスクも残っており、26日のアジアの相場に影響がでることも意識しておく必要がありそうです。

全体として為替相場は、AI実装のアルゴリズムが徘徊するぐらいしか相場に参加するものがいなくなる時期ですが、流動性がないだけにひとたび事件事故で相場が動きだすと、大きなものになりかねないだけに引き続き注意が必要です。