長きにわたってもめ続けた米中貿易協議の第一フェーズの合意・調印式が15日に行われ一定の公約が設定されることとなりました。
とにかく2020年の大統領選挙スタートということで成果を得たいトランプがあせって前倒しに調印した感が否めませんが、とにかく数値をしっかり入れて2年間で日本円にして22兆円相当を中国が米国から購入することが盛り込まれており、その代わりとして米国は中国を為替操作国から外すこととなりました。
しかし既に実施されている追加関税についてはすべてが履行されたところを見計らって外すこととなり、今回の調印での撤廃は見送られています。
今回の合意調印は年初米国が仕掛けたイランの革命防衛軍司令官の暗殺の事件からかなり霞んだ感がありますが、度重なる米中の対立のたびに下落相場に直面してきた金融市場にとってはひとつ悪材料が消滅したことになります。
農産物やエネルギー関連は実現可能でもそれ以外の項目の実現は不透明
この合意文書では農産物やエネルギー関連については20年と21年にそれぞれ購入金額が規定されていますが、農産物については豚コレラの影響をかかえる中国にとってはある程度は達成しやすいものになるのでしょうが、累積で500億ドルを達成できるのかどうかは不透明な状況です。
またエネルギー関連も調印数字通りに購入が進むのかどうかもまだ不透明です。
さらに米国から航空機や自動車などの工業製品を含めて年間輸入を1000億ドル拡大し、2017年に比べて53%増加させるという内容も記載されていますが、こちらは想像以上に金額が大きく本当に実現できるのかどうかは今一つよくわからない状況です。
2年後、ほとんどの約束が絵に描いた餅にならないことを期待したいところですが、数値の達成は中国次第というところになっているといえます。
これがすべて達成された際には現在実施されている追加関税がすべて撤廃されることになりそうですが、うまくいくのかどうかはまったく判らないというのが正直なところで中国が約束を破った場合、米中関係は逆に悪化することもあり得ます。
またこの合意文書では中国の企業および政府機関による米国の技術と企業機密の窃取に対し中国側が取り締まりを強化する旨も記載されていますが、どこまで取り締まりが厳しくなるのはよくわからないのが実情で、知的財産の問題も実際にはどうなるのかはまだまだはっきりしていません。
とはいえ、中国から具体的に貿易を促進する購入の数値のコミットを得られたことはトランプの大統領選をめぐる成果のラインナップに米中交渉を加えるのにはうってつけであり、そのために拙速な調印を勧めたのではないかと見られます。
この先の交渉は相当難航しそうな状況
トランプ大統領は第2フェーズもできるだけすぐに再開したいとしていますが、ここから先は中国の国家主義の中核をなすような政策の修正や改定を求める内容が多くあることからそう簡単には交渉が進まないという見方が強いようです。
結果的に大統領選の投票までに追加の成果を出すのは相当難しそうで、近々に米中が次のステージを巡って対立するリスクは相当高く残っているといえます。
いずれにしても金融市場はすべてを織り込んだことから材料は出尽くし感があり、次なるテーマが何になるのかを注目しはじめています。
月末には英国のEU離脱も成績決定することから2019年に散々相場を振り回してきた材料は消えることになり、かなり状況が変化していくことが予想されます。
為替は調印前に期待からドルが全般的に買われる動きとなりましたが、直近では一巡し完全に相場材料からは外れた感じになってきています。