金融市場ではとにかく米株、欧州株、日本株と主要国の株式市場が大きく下落し、中央銀行の金融政策では歯止めをかけられない状況が続いていますが、それとは別にドルに対する市場の需要が一段と強まっており、為替市場からドルを買って調達する向きも消えないことから、ドルは多くの通貨に対して高い水準を延々と形成する状況が続いています。
コマーシャルペーパー市場のドル短期資金のひっ迫は継続中
米国のコマーシャルペーパー(CP,短期社債)市場では延々と市場の緊張が続き、ドルの短期資金に対する需要が引かないことから延々とその需給がひっ迫し続けており、NY連銀が莫大な資金を投入してもまったく収まらないという非常に異例の事態が進行中です。
FRBはさっそく17日にCPに異例の措置を公表していますが、ドル短期資金の需要は収まるところを知らない状況に陥っています。
当然短期金利は上昇局面にあり、これまでにない市場の動きが強まっています。
これを受けて為替市場でもドルは非常に強い動きを示現しており、ドルインデックスは18日でもなんと100を超えて101.70という高値をするほどの上昇する特殊な相場になっています。
NYタイムのはじまりに合わせたかのように上昇しはじめたドルインデックスは、個別通貨でもその兆候をはっきりと現わすことになりポンドドルがドル高方向に急落したのをはじめ、ドル円はなんと108円台後半から109円台を窺う動きとなり、19日の東京タイムにはさらに上昇し109円台半ばまで値を上げる動きを見せています。
つい一週間前に101円をつけた世界からは想像もできないほどの上昇を見せており、市場のドル買い需要が尋常ではないことを明らかにしている状況です。
こうなると果たしてドル円の買いにどこまでついて行くべきかが非常に迷うところでもありますが、ややもすれば110円台に乗せる可能性すら出てきていますので、迂闊なレベル感で売るわけにはいかない特別な時間帯に差し掛かっていることを改めて感じさせられます。
すでに109円台を超えたことで日足の200日移動平均を超えるレベルになってきているわけですが、過去4年続いた三角持ち合いの上限を考えますとここから再度2月の112円を試すことになるとは思えず、市場参加者が延々と持ち続けているロングのコストにもなる110円の手前あたりで上値が抑えられることも想定される状況になってきています。
リスクオフでドル円がここまで上昇したことは過去にはない事態
多くの市場参加者が首をかしげるのは、いくらドルの需要が強いといっても101円をつけた世界から10日もたたないうちに110円を突破しかねないところまでドル円の価格が戻ってしまうという現実で、いくらドル需要旺盛と聞いてもどうしても納得の行かない部分が残るものがあります。
たしかに昨年10月ごろからFRBが隠れQEを始めたあたりで、米国の株式市場や債券市場に大きな資金が流れ込んで活況を呈したわけですが、ここへきて証拠金で市場に参入した向きは須らく追証をドルで支払うことを求められており、多くの市場参加者がドルキャッシュを求めて右往左往している可能性は否定できません。
しかしそれにしてもここまでリスクオフ、かつ相場の大暴落状況でドル円が強含む市場を見たことがある人間はほぼ皆無であり、やはり納得のいかないものを感じるものがあります。
実際ここかの相場が一定の落ち着きを取り戻した場合にドル円は、上昇を維持するのか下落するのかは大きな注目点であり、その動きが注目されるところです。
巨額の財政出動をする米国政府から考えればドル安を志向する可能性は高い
ところで、FRBの金融政策がうまく株式市場に機能しないとみたムニューシン財務長官は、巨額の財政出動を示唆して市場を落ち着かせることに躍起になっていますが、100兆円を超える財政出動を米国政府が実施した場合、とりもなおさずドル安を志向してくるであろうことは容易に推測できるものがあり、政治的な材料から考えればドル円はトランプ大統領からも強烈に円高方向に動くことを強制されそうなところにさしかかっています。
米国は過去にも負債が大きくなった時には関らず、ドル安を志向した動きを各国に働きかけてきていますので、とくに話しをつけやすい日本に対してドル安円高を示現するように強要してくるであろうことは容易に予想できるものがあります。
それがどのタイミングになるかが注目されますが、恐らく大統領選を控えて今年の比較的早い段階に対ドルでの円高シフトを要求されることには注意が必要になりそうです。
過去40年におよぶ日本の為替の歴史はまさに米国からの政治的な為替水準の強要の歴史でもありますから、今回の新型ウイルス騒動でドル円がより円高に向かうことを米国からオーダーされるのはもはや間違いなさそうで、それが100円で許されるのか90円以下を望まれるのかはトランプ次第になってきてそうです。
当分ドル高円安が進みそうですが、どこかのタイミングで一転してドル安円高シフトがでることには今から注意しておく必要がありそうです。