FRBが無制限の緩和措置に乗り出してからというもの、米株の指数は驚くほど上昇してきていますが、実はその中身を冷静にチェックしてみますと、必ずしもすべての株式が上昇しているわけではなく、特定銘柄げS&P500の指数を引っ張り上げているだけであることが見えてきます。

Data ゴールドマンサックス

ゴールドマンサックスが分析した内容をチャートにしたのが上記になります。

今年の4月30日までの相場でS&P500の相場を見ていますと、フェイスブック、アマゾン、アップル、マイクロソフト、グーグル(アルファベット)の5銘柄とS&Pの残り495銘柄の価格を比較してみますと、この特定5銘柄は確かにプラス10%の上昇を示現しているにもかかわらず、ほかの495銘柄はマイナス13%の下落で、必ずしもすべての銘柄が上昇していないことが明確になっています。

しかも、この特定5銘柄だけで米国の株式市場の時価総額の20%を超えるという集中的状況で、実はこの金額は日経平均の時価総額を超えているという猛烈なものになっているのです。

Data ブルームバーグ

株式市場は早期の新型コロナ後の経済再開と、そのV字回復への期待から上昇しているとされてきましたが、結局はここでご紹介している5銘柄に集中して、相場が大きく持ち上げられていることがよくわかります。

ただ、米株市場はこうした集中的投資と株価の上昇というのはバブル期にはよくあるもののようで、2000年のITバブルの時にも顔ぶれは違うもののマイクロソフト、GE,シスコ、インテル、ウォルマートが同様に相場を持ち上げていたことがこのチャートから見えてきます。

集中度が高いだけに下落のリスクも非常に高い可能性

今回資金が集中している5銘柄は、どれもキャッシュフローがしっかりしており、3月の相場下落の時も下落率はS&P500の平均下落率よりも軽微に済んでいたことが注目されますが、それにしてもこの特定銘柄に資金が集中しすぎているのは非常に気になるところです。

まずウォール街のマネージャーたちは、今年後半の米国大統領選にあわせてとにかく相場が下落し始めれば、FRBがさらに何か手立てを尽くしてくれると固く信じているようですし、3月に猛烈な損失を被ったヘッジファンド勢もこの相場に乗る以外有効な方法がないことから5銘柄投資に賭けているようで、これが相場をさらに引き上げていることが窺われます。

さらに新型コロナで失業したミレニアル世代の一部は、収入の補償が国や州から提供されていることからそれを利用してこの5銘柄に便乗投資をおこなっているようで、ウォールストリートジャーナルもそうした実態を既に報道し始めています。

今のところこの5銘柄は比較的順調であり、とくにアマゾンは新型コロナでさらにネットビジネスが拡大するなど、コロナ禍でビジネスが拡大する数少ない企業のうちの一つになっています。

ただ、相場というものには絶対はあり得ませんから、何かの原因でこの5銘柄が崩れることになると相場は下落する危険性もありそうです。

為替市場は株式市場との相関性は薄れつつあるものの株価の動向に確実に影響を受けることになりますから、米株がここから再度二番底なり大底を狙いにいくような動きに転じれば当然初動としてドル円も一旦円高方向に動くことが予想されます。

足元ではほとんど動意がなくなっており、1日のボラティリティも3月暴落以前の状況に逆戻りしていますが、6月の相場ももう目と鼻の先であり大きな反転下落相場が展開するリスクは常に意識しておく必要がありそうです。

主要各国は延々と都市封鎖を続けることが限界にきていることから、前のめりに経済の再開に乗り出していますが、感染が完全に収束したとは言い難く、再度どこかで二次感染が起きるリスクも高まります。

相場は株を中心にして楽観ムードが一段と高まりつつあるように見えますが、実態経済の悪化はこれからですし、株価だけがどんどん上昇する相場がここから年末まで延々と続くかどうかはだれにも判らないのが実情です。

むしろここから夏にかけては再下落のリスクを意識し、とにかく油断禁物の時間帯として常に注意してトレードしていくことが重要です。