5月の為替相場はユーロが若干動いたもののドル円をはじめ、ほかの通貨ペアも動意は非常に限られたものとなりました。

主要各国は国民の経済的な問題もあり、とにかく封鎖を継続することが難しくなっていることから、完全に感染が収束したわけでもないままに都市部の封鎖を解除しはじめています。

しかし、二次感染なのか一次感染の継続なのか判断がつかない中で新たな罹患者の数も増え始めており、為替市場は株式市場のような吹っ切れた状況にはなっていないのが実情です。

また、各国が挙って緩和に乗り出していることから主要通貨間の金利差などもまったく示現しなくなっており、主要通貨ペアにも明確なトレンドはでない状況が続いています。

ドル円日足5月末までの状況

ドル円は5月、ほぼ2円幅での動きとなり後から日足のチャートを見渡してみますと、3月の暴落後大きく値を戻してからは相当値動きが小さく収れんされた状況に陥っていることがわかります。

先週は週初に一旦108円に上伸することになりしたが、108円台の滞空時間は極めて短くあっという間に押し戻されたものの106円台に押し戻される力もなく狭いレンジを往復する毎日が続きました。

ユーロドル日足推移

ユーロドルはドル円に比べればこの1か月動いた感があるものの、過去から比べればその上下幅は一段と狭まってきており、こちらも動意は限られていることがわかります。

ドイツとフランスによるユーロ復興基金の話で一時はユーロ高になりましたが、オランダ・オーストリア・スウェーデン・デンマークの4カ国がこれを拒否したといった報道もあり、その後はユーロが買われる動きにはなっていません。

週明けから6月相場になりますが、5月の静かでほとんど動意のなかった相場から様子が変わっていくことになるのかどうかが注目される状況になりそうです。

トランプ大統領の中国を巡る言動にも十分な注意が必要

Photo Reuters https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/05/post-93547.php

トランプ大統領は中国が香港への統制を強めるために可決した国家安全法制の導入を受けて、中国への対抗委措置としてこれまで香港に認めてきた貿易の優遇措置を停止すると発表しております。

また、中国に完全に支配されているという理由からWHO・世界保健機構に対する資金の拠出を完全に終焉させる旨も発表しており、米中対立はいきなり厳しい状況へと逆戻りしはじめています。

金曜日のトランプ会見は午後であったことから中国からの具体的な反応は出てきていませんが、週明け以降中国側が反発することでお互いに制裁の応酬となった場合には、想像以上の対立激化も考えられるだけに今後の両国の動向、並びに英国、カナダ、オーストラリアの本件に関する動向を注視する必要がありそうです。

今のところトランプは具体的に口にはしていませんが、米国NY市場で上場を果たしている企業の上場廃止について具体的な措置をとった場合には150社ほどが大きな影響を受けることになり、米国市場自体にも多大な悪影響を及ぼすことになりそうで非常に危惧されるところです。

株式市場はこの香港をめぐる米中対立についてはほとんど相場に織り込んでいない状態が続いており、3月の新型コロナの欧米での感染拡大時と同じように今さら相場が大騒ぎする可能性があり、応分の相場の下落も覚悟する必要がでてくることになります。

AIやアルゴリズムが市場を煽動するようになってからこうした奇妙な光景をよく見かけるようになりましたが、改めて市場を揺るがすテーマになる危険性を十分に理解しておく必要がありそうです。

6月に入って相場の流れが変化するかどうかにも注目

株価は大きく上昇したものの、為替は妙に冷静さを維持した5月相場でしたが3月の暴落からすでに3か月目に突入することで、相場に新たな変化が訪れ再度二番底を探りにいくような動きになれば、為替も当然ネガティブに動きだすことが考えられるだけに決して楽観視せずに日々の状況をしっかりウォッチしていくことが必要になりそうです。

ヘッジファンド勢はどう見ても下落が来るとの思惑から株もドル円も売り持ちをしていたようですが、株式は大幅上昇、為替は下がらないことから結局売りを一旦解消して5月相場を終えているようです。

しかし、6月は半期決算の月でもありますから5月とは異なる動きになる可能性もあり、油断しない取引を継続させることが肝要になりそうです。