3月後半に新型コロナウイルスの感染拡大から米株市場が大暴落し、それに引きづられるように日経平均も大きな落ち込みを見せましたが、すでに2か月半近い時間が経過しようとしています。

市場が警戒している二番底への下落の兆候は全く見られず、むしろ日米ともに個人投資家が猛烈に市場に買い向かいで雪崩れ込むことで、相場は前値戻しをしかねない状況になってきています。

市場ではすでに二番底を語る人も少なくなっていますが、果たして本当に株式市場は下落に見舞われないまま上昇軌道を維持することができるのでしょうか。

為替市場は楽観が支配する株式市場とは別に非常に冷静に相場が続いていることも気になるところです。

過去の確率から考えれば2番底、大底はまだこれから来るリスクが高い

こうした相場状況になりますと、過去は一体どうだったのかということが気になります。

米国株式市場の場合、1950年以降に16回あった米国の弱気相場のうち82年の1回を除く15回で、株価は一番底の1~3カ月後にさらに深い二番底をつけており、かなりの確率で次なる下落がやってきたことを示しています。

本邦の場合には1985年以降36回の下落を伴う大相場が確認されていますが、そのうち二番底をつけに行かなかったのは3割程度で、7割が必ず再度底値を試しに行ったという結果が残っています。

国内の場合の36回は景気の上下動からくるもので、必ずしも暴落後の動きというのではないようで、いずれにしてもここから何も怒らずに相場がもとに戻るということは確率的にはあり得ない話で、依然として注意が必要であることは言うまでもありません。

国内の証券会社のアナリストの一部は、コロナショックでいきなり経済も景気も底が見えたことが二番底を形成しない大きな要因と分析しているようで、30%程度の相場の下落は大暴落というにはあまりにもその値幅が狭く、これから大底を狙う動きが出る可能性を指摘する向きも多くなっています。

今回の相場状況が非常に似ているとされる1929年から3年近くの米株の相場展開をみますと、下のチャートのようにまだ下落がくるのはこれからとも言えそうで、単なるベアマーケットラリーで戻りの期間を試しているだけに過ぎないとも言える状況です。

Data World Cycle Institute https://worldcyclesinstitute.com/weve-been-here-before/

実態経済を無視して上昇し続ける相場は20世紀以降一度もないのが現実

近代的な資本主義の株式市場が主要国を中心に成立してからすでに1世紀以上の時間が経過していますが、景気後退の最終局面において不景気の株高という状況が示現したことはあっても、これから更なる経済の壊滅的な下落が示現しようとしているのに、株だけが史上最高値を走るといったことは起こったことはないのげ現実です。

とくに株価は企業の将来のキャッシュフローから生成される未来の収益の現在価値として示されるものですから、ここからの業績がまったく上がらない、あるいは経済全体としてGDPが縮減しようとする真っ只中で株価、および株価指数が大きく上昇するというのは違和感のあるもので、たとえ暴落がないとしても実態経済の現状に株価がサヤ寄せして下げてくる側面は十分に想定できる状況です。

個人投資家は勢い込んでこの相場に買い向かいをかけており、それなりの利益も確保し始めているようで、機関投資家の多くは今の株式市場に資金を投入するのをかなり控えているようで、主要な機関投資家の現金保有比率は6%に近く、こうした投資家の多くがまだ相場が下がることを予想しているとともに、この株価のレベルで買いを入れても長期的に利益がでないと判断していることが見えてきます。

こうなるともっぱら市場で元気がいいのは個人投資家だけとなりますが、彼らは一般の投機筋と同じように買ったものはどこかで売るのが基本ですから、相場がひとたび崩れはじめると一気に売りを出してくることになり、その行為自体が相場の下落を引き起こすことになるということについては注意が必要です。

100年に一度で今を生きる市場参加者が誰も経験したことのないパンデミック相場の先行きを安易に予測するのは非常に難しいものがあります。

とくに現状は野球で言えば試合が始まって1回の裏か2回の表位の時間帯ですから、ここから最後に相場がどうなるのか秋口まで何も起こらないようならば確かに二番底は来ないのかもしれませんが、今の時点でそれを予測しきるのはかなり危険です。

残念ながら相場の世界も人間がハンドリングしている以上、歴史を繰り返すというのがもっとも可能性の高い見方になってきていることは忘れてはなりません。