6月に入ってからのドル円は、5月とは打って変わって結構大きなボラティリティを示現する動きとなりました。
5日の発表された米国の雇用統計は、市場予測を遥かに超える良好な非農業部門雇用者数や失業率の低下などからご存知の通り、米株も驚くほど続伸しドル円もそれにつられるかのように110円一歩手前まで上昇するという天下になりました。
しかし週が明けてみますと、夢から覚めたかのように今度は下向きの動きを継続することとなり、109円は簡単に割れてさらに下値を模索するような動きとなりました。
全般的にはFOMCを前にしてポジション調整が進みドル売りが加速したこと、米債金利の低下に連動した動きなどが市場で指摘されましたが、108円台中盤をほぼ直線上に走っていた下のチャートの赤線である200日移動平均線を割れてからは下落が一層進むこととなり、FOMCの前にはすでに108円を割れる低調な水準にまで値を下げることとなってしまいました。
そして迎えた日本時間11日午前3時のFOMCですが、大方の市場予想通り金利は据え置きで、市場が非常に注目したYCC・イールドカーブコントロールについては議論はしたものの実行には至らないということで大きな驚きはない内容となりました。
しかしその後のパウエル議長のネットの記者会見では、2022年までゼロ金利を継続することや2020年のGDPが年間トータルでマイナス6%超になること、雇用統計で発表された数字よりも実際の雇用がかなり悪いことなどを暗い表情で語ったのが悪かったのか株は大きく売られることになり、翌日にメジャーSQを控えていた日本の日経平均株価も大幅下落、さらに翌日の11日NYタイムでは米株が挙って大きく売られて史上4番目の大暴落を演じることになってしまいました。
これにはトランプ大統領もえらくお冠で、FRBがまたしでかしたといった内容のツイートをしていましたが、冷静に見ますと必ずしもパウエル発言が相場に大きな影響を与えたとは思えない部分が多く、FOMCをきっかけにして売りに回った投機筋に引きずられる形で、個人投資家が下落途上で流動性パニックから売りを加速させたことが結果的な大暴落に繫がったのではないかと推測されます。
翌日金曜日の米株相場NYダウで一時800ドル超の戻りを試しましたが、それなりの利益確定売りもでて一旦マイナスに沈む場面もあり、終わり値はなんとか500ドル超の戻りを示現して週の取引を終了しています。
こうした株式市場の大幅下落の局面ではドル円も107円台を割れ、106円台中盤からさらに下値を模索する動きとなりましたが、この下のレベルにはそれなりの買いが岩盤のように横たわっていたようで、結局数回下押しをしてみたもののそれ以上われないことから週末のNYタイムは107円台に戻って相場を終了しています。
とは言え、6月初旬から12日までの二週間で上下3.2円幅の上昇と下落を示現し、5月の低ボラティリティ相場とは大きく変化したことは間違いなく、とりあえずひと相場終わった感があります。
ユーロドルもFOMCで上抜けしたあとゆっくり下落の状況
一方ユーロドルの方は、FOMCに向けての巻き戻しとパウエル議長の発言を受けたドル売りの加速で約3ヵ月ぶりの高値となる1.1425レベルまで上伸する動きとなりましたが、その後株価が急落したのを受けて府リスクオフのドル買いが急激に進むこととなり、週末に向けては一週間ぶりに1.12129レベルまで巻き戻すという完全に行ってこいの展開となりました。
上手く波に乗れて逆張りで上げも下げも取れた向きにはそれなりの利益がもたらされることとなり、単純に買い向かった向きは損切を余儀なくされ結構損をした個人投資家も多かったのではないでしょうか。
週明けの相場は新たな動きをしっかりと確認する時間帯に
ドル円にしてもユーロドルにしても2週間で結構なボラティリティがあり、すでにひと相場終わって次なるテーマを待つ時間帯にさしかかっているようですが、ドル円の場合ファンダメンタルズ的にもテクニカル的にも上昇していく材料は限られており、むしろ下落リスクの方が気になる状況です。
市場には今回の新型コロナ禍がすでに底を打ってV字回復の途上にあるとみるアナリストも増えていますが、実態経済の落込みはまだまだこれからで、何より今年2月まで12年8か月というアメリカ建国以来でみても最大の長期的景気拡大を果たした経済がリセッション入りしていて、ほんの4か月程度でもとの上昇軌道に復帰できると考えること自体が不自然なもので、まだまだ二番底狙いの下落に用心しなくてはならない時期であることをつよく感じさせられます。
米国ではコロナに伴う給付金が多く支給されており、ミレニアル世代は通常の勤務時よりも一時的に可処分所得が上昇するといった不思議な状況に陥っています。
これが個人投資家を株式投資に向かわせているというのはどうやら事実のようで、逆に給付金が7月で打ち切りになると株価から資金が再度逃げていくことも十分に考えられるだけに、株価の下落と為替でのドル円の再下落がリンクする場面も意識しておく必要がありそうです。
週明けはそんな次なる動きを察知する一週間になりそうです。