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7月18日の土曜日には決着がつくと思われていたEUサミットの最大議題であるコロナ復興基金は、結局5日間も延々と協議をして21日未明にようやく決定しました。

欧州委員会が債券を発行して市場から総額7500億ユーロ(約92兆円)を調達するものの返済不要な補助金3900億ユーロ、返済しなければならない融資3600億ユーロのパッケージとすることで合意するのに5日近く時間がかかったもので、返済不要部分を1100億ユーロ減らすのに5日間時間がかかったことになります。

日本のように予備費で何に使うか判らないことでも、10兆円簡単に予算を組む国とEUとはどうやら大違いのようで日本円にして13兆円強を返済するのかしないのかでオーストリア、デンマーク、オランダ、スウェーデンにフィンランドを加えた5カ国が最後まで反対し結局減額で落ち着いたということになります。

英国のEU離脱問題もそうでしたが、とにかく参加国が協調しないとなにも決められないというEUの欠点がまたしても露呈した形で傍で見守るものとしてはかなりうんざりさせられる時間が続きました。

それでも延々と議論してなんとか決着をつけたという点は評価できるものがあります。

欧州北部の国々は債権国となり南部が債務国となることから今回もこの対立は明確になった形で、フランス大統領は歴史的な日であると自画自賛したようです。

100年に一度の災禍をブロック経済で乗り切ろうとするEUが、この程度のことですら利害調整に異常なほどの時間がかかるということを改めて露呈させてしまうイベントとなってしまったことだけは隠しようのない状況となっています。

ひとまず問題は収まったわけですが、これでパンデミックによるEU分断が避けられるのかが大きな課題として残りそうな状況です。

経済優先のスウェーデンはコロナ対策で完全敗北

経済的な供給資源を一元化してEUが困窮国を救済するというのは、そもそものEU成立の基本要件にあたるものでもちろんこれができればEU存続の価値は大きく評価できますが、このコロナ対策ではEU加盟国のコロナに対する対応が大きく異なったことも気になるところです。

すでにこのコラムでもご紹介しているスウェーデンはコロナ発症段階から、とにかく経済を優先するということからなんら有効な対策も打たずに国民はそれまでどおりの生活を維持することになりました。

しかし、結果といえば感染者、死亡者ともに周辺国よりも断然高くなり、挙句の果てに経済の停滞も対策を打った国よりも縮減してしまうという完全な政策失敗に陥っています。

本来であれば地続きでもあり、EU委員会がもっと強い指導力を発揮することで各国共通の対策をとることもできたはずで、コロナ感染は終わったわけではないですから、お金の問題以外でもより強い結束とコロナ対応を実現すべきではないかと思う次第です。

ユーロドルは上昇軌道に復帰か

ユーロドル1時間足推移

ユーロドルはこの報道をうけて上昇軌道に乗った形になっていますが、無条件で買いあがるほど先行きが明るいわけでもなく一応上昇すると上値を叩かれるといった厳しい状況が続いています。

ただ、下値もかなり堅くなってきていますので下げたところではしっかり買い向かいも出そうな雰囲気で、この夏の期間にどこまで上昇を実現することができるのかが大きな注目ポイントになりそうです。

新型コロナに関してはどの国も収束したとは言えない状況が続いており、ハードデータ的に悪い数字がでてくるのはこれからということになりますので、遅行指標であってもこれから悪い経済指標がでたときに果たしてそれを織り込む形でユーロが上昇を維持できるのかが大きな問題になりそうです。

ただし、通貨は相対的なものでドルがここまで大量に市中に出回ってしまったことを考えますと、ドル高が続くとは思えないのが経済学的な基本発想になりますから、対ドルについてはかなりユーロが強含む展開となっても決しておかしくはないのが実情です。

過去数年にわたってレンジ相場を延々とつづけてきたユーロドルが大きくトレンドを伴って上昇軌道に乗るかどうかは為替市場における最大の注目ポイントになりそうで、ここからは市場参加者も増えることが予想されます。

ここのところさっぱり動かない為替相場で、これをきっかけにして大きく利益が取れるタイミングを期待したいものです。