過去5年間のほとんど上下幅がなかったドルインデックスですが、ここへ来て明確にレンジ相場から下抜けをして、さらに下落を試しそうな勢いになってきました。
7月の単月だけ見てもドルインデックスは4.1%下落しており、1か月の下落率としては2010年9月以来の10年振りに近いもので、下落の方向性に向かいつつあることがわかります。
ドルインデックスと言えば57%程度の構成がユーロドルで、ドル円は13%程度でこの指数が下落すればまず最初にユーロドルが上昇することになりますが、相場はまさにその通りの状況で、今後ドル円にも影響が大きく出る可能性がではじめています。
過去6年のドルインデックスを見ても2014年に大きく80台から上昇して103を付けて以来、ほぼ5年以上レンジの領域を上下してきて、ここへ来ていよいよ下抜けから下落トレンドを形成しそうで、ここから100に戻らない限りいよいよ下げ三波の一部として下値を目指すことになりそうな状況です。
ドル安要因は満載の状況
ずっとFXのチャートを見続けていますと、ここへ来てドル安が示現するのはかなり唐突な印象を受けますが、実はこれにはいくつかのファンダメンタルズ的要因が重なっていることがわかります。
まず、3月からのFRBのなりふり構わぬドル資金の市中への投入により、ドル重要は充足され逆にドルの余剰感が市場に漂い始めていることが挙げられます。
米国の連邦債務はすでに日本円で2700兆円を超えるレベルまで膨れ上がり、ここからもトランプ政権はコロナ対策の給付金や減税などの措置を講じることになると、債務はさらに大きく拡大し年末には軽く3000兆円を超すのではないかといった見方も広がっています。
しかもこうした資金はすべて赤字国債で賄わざるを得ないので、FRBとしても金利を上昇させるわけにはいかず、YCCのような手立てを採用するのはもはや時間の問題ではないかとも見られている状況です。
市場参加者の視点で言いますと、金本位制時代のドルと違って輪転機を刷りまくってばら撒かれているドルの価値が大きく下落するのではないかという危惧の念が高まるのは当たり前で、ドルへの信認は大きく下落しようとしています。
さらに中国との紛争など政治的な材料から見ても、ドルから回避する動きがでるのは当たり前の状況で、これは今後リスクオンになってもリスクオフになってもドル売りにつながるリスクが相当高まったことを示唆していると言えます。
ユーロドルの上昇はもはや規定路線か
こうした顕著なドル売りを受けて個別の通貨ペアではそれに対応した動きが既に示現し始めています。
7月に入ってからユーロドルは一貫して上昇を継続していますが、7月31日の東京タイムお昼の12時にはドル円の下落との逆相関的状況からとうとう1.19084をつけており、月末のポジション調整などもあって度の誤は1.17台に下落していますが、ここから年末に向けては1.3台に向けてさらに上昇する可能性も高まりつつあります。
かなりロングポジションが積みあがっていることから一定の調整的下落もありそうですが、それはまさに押し目買いのチャンスになりそうで、十分に引き付けたところで買いを検討する機会が巡ってきているといえます。
冒頭に書きましたように、市場参加者の多くが懸念するドル安要因というのは短時間で解消するものではない本質的なもので、ここからは常態的にドル安になることも十分に考えられ、ユーロは地域内に様々な問題を抱えていることも事実ですが、ここからさらに上昇軌道のりそうな状況となってきています。
ドル円104円台のサポートラインを下抜けて102円台に向かう可能性も
一方ドル円のほうも7月最終週には、かなり下落を試す形になり106円を下抜けてからは105円割れをあっさり試し、104円台が定着したところで月末の7月31日には珍しく東京タイムの前の朝8時に下値を試す動きをさらに強めることとなりました。
104円台中盤にあったいくつかのサポートラインを下抜けてしまいましたので、ここからは102円方向を試しても決しておかしくはない状況になってきています。
ただし、月末のポジション調整や買切り玉などがでたのかロンドンタイムからNYタイムに向けては驚くほど買い戻しが入り、1日の午前1時すぎには106円を超えるところまで上昇するというさすがにやり過ぎ感満載の戻りを試す結果となりました。
恐らく戻り売りを狙って105円台中盤までで売った方は軒並み損切を余儀なくされたことと思いますが、久々に1日で190PIPS程度の値幅がドル円にも出たという点ではかなり流動性の高い相場になってしまいました。
週明けのドル円は一旦もう少し上を試す可能性も否定はできませんが、ドル安要因は不動のものとなりつつありますので週明けの一週間の中かどうかは判りませんが改めて下値を試すタイミングがやってきそうです。
さすがに売買の方向を断定してしまうのは危険ですが、チャートでテクニカル的にこうした方向感と合致している場合にはしっかりエントリーして売買を試していきたいところです。