7月末からドルは全体として弱い傾向が継続中です。

7月31日段階で、ドル円もユーロドルもドルベースでの最安値をつけてから一旦は調整的な戻りを試していますが、8月はシーズナルサイクルとしてもドル安傾向が強まりやすいだけに、8月限定でのドル安を想定しているトレーダーが多いのが実情です。

しかし、その一方で市場ではより本質的な問題に起因してドル安が示現しはじめているという見方も強まりつつあります。

すでに著名人や経済学者の多くがドル安の継続と金の上昇を予想し始めており、どうも為替市場はこの3月暴落直後あたりのセンチメントから大きな変化が起こり始めているようです。

ルービニ教授の見解が秀逸

中でもかなり明快にドル安と金の上昇を語っているのが、ニューヨーク大学大学院のルービニ教授です。

このルービニ教授、当コラムでもすでに何度かご紹介していますが、Yahooファイナンスのインタビューに答えた同氏は明確にドル安が起きている原因を口にしています。

ドル安は一過性のものではなく本質的な問題と市場は見始めている
Photo YahooFinance Youtube https://youtu.be/zAClHTpF3R0

まずルービニ教授は、金が極めて強気に展開している背景について、FRBをはじめとして中央銀行がこれまでにないような金融緩和を行い、特に米国では過去3回の金融緩和における見せ金のようなものではなく、本格的に市場に資金をばらまいたことが実質的な利回りの低下を招き、市場が法定通貨から金や銀などに資金を逃がし始めている大きな要因になっていることを指摘しています。

米国と中国、ロシアとの対立は世界的に中央銀行の外貨準備からドルを減らす動きになり始めており、とりわけ中国などが米国におけるまさかのデフォルトや無理やり収用されるような事態に陥った時のリスクを軽減するために、米国債を売って金を購入する動きが顕在化していることも金価格上昇の材料になっているとの指摘を行っています。

確かに世界の中央銀行の外貨準備における米ドルの保有率は年々低下傾向にあり、54%程度と一昔前に比べますとその依存度は急激に低下を始めていることがわかります。

また、金融緩和でとにかくじゃぶじゃぶに米ドルを市中に配りまくったFRBのみならず、すでに連邦債務が26兆ドル、年末までには28兆ドル超で日本円にすると3000兆円も多額の借金を抱える米国政府が、その資金のよりどころをすべて国債に依存しているのも大きな問題で、これだけドルが広範に市場にバラかまれてしまえばドル安が示現するのはもはや自明の理といった状況であることも指摘しています。

現状のドル安と金の高騰は同一の要因をベースとした表裏一体の状況であり、この流れは一過性のものではないとの見方を強めています。

まさかのインフレ到来も視野に入れるべき状況

ルービニ教授は市場参加者のほとんどが誰も口にしなくなったまさかのインフレが到来する可能性についても指摘をしています。

コロナショック禍では、主要国でもまずデフレが先に到来するとみられていますが、このデフレ的影響が解消する過程でインフレが顕在化する可能性を指摘しています。

米国だけをとってみても、確かにこれだけ紙幣が市場に撒かれてしまえばインフレになるのは一般的な経済学の理論では至極真っ当な話しで、金に対する需要の強さは既に市場のインフレ懸念を反映したものなのではないかとの指摘も行っています。

MMT理論はすっかりインフレが起こらないことをベースにして語られていますが、ここから本当に金利が上昇し本格的なインフレのステージが到来するとなればFRBをはじめとする中央銀行は全く政策を継続することができなくなり、株価の大幅な暴落を招きかねない状況で、インフレに対する注視は非常に大きなポイントといえます。

ドルは秋口からも常態的に下落する可能性

相場ではとにかく8月という季節性からドル安が語られていますが、実はもっと長いレンジで見た時にすでにドルはリスクオンでもリスクオフでもクラッシュに向かって走り始めており、その最初の兆候がドル安になっている可能性は十分に考えられそうです。

11月の米国大統領選挙のことを考えればここから米株が大きく下がることも考えにくいですし、ドルも秋口から例年のシーズナルサイクルにのっとって上昇軌道に戻るという見方は依然として市場では強いものがありますが、実はそうした流れにはならないシナリオというものもしっかり考えておく必要がでてきているようです。

相場には絶対というものはありませんし日々変化を遂げていますから、その結果として大きなパラダイムシフトが示現してもおかしくはない状況です。

すでに市場の底流では変化が起こっている可能性は高く、この夏から先の相場には注意が必要になっていることを感じさせられます。