比較的、膠着感が強い為替相場の中で唯一大きな動きを連日示現し、強烈なボラティリティを発揮し始めているのがポンドの存在です。
それもそのはずで、今年のはじめに一旦は合意したはずのEUとのBREXIT協定を英国が、いまさらちゃぶ台返しのように国内市場法案なるものを議会で可決すべくボリスジョンソン首相が動き出し、EU側としても相当憤懣やるかたないものとなっており、EUの高官はとにかく9月30日までにこの議論を終焉させて元に戻らない限り協議に応じない、つまり合意なき英国のEU離脱とする旨の脅かしをかけはじめています。
これまでは交渉の途上での威嚇的発言も多くみられ、2016年6月の英国内の国民投票からすでに4年3か月以上の時間が経過して、この調子でさすがにEUの堪忍袋の緒が切れるのも理解できる状況で、英国がこのまま合意なき離脱に突入する可能性は極めて高くなりつつあります。
為替相場もある程度の英国のハードBREXITは織り込んではきたものの、全く合意のないまま着の身着のままの離脱が実現することが眼前に現れたことで、改めて猛烈なポンド売りの相場が展開しはじめています。
暴落のXデーはかなり絞られてきた
ボリスジョンソン首相は、今回ご丁寧に自ら交渉の期限を来月10月15日と決めて公言していて、このタイミングでなんら合意が得られなければ本当に英国が離脱に踏み切る危険性は相当高まることになり、ジョンソン首相の宣言とともにポンドはあらゆる主要通貨に対して大暴落という局面を迎えることが予想されます。
また、この期日の前にも9月末までに英国が議会での新たな法案の議論を完全に終結させない場合、EUが懲罰的に英国との交渉を打ち切り宣言し自動的に合意なき離脱に突入することも考えられます。
EUは本当にそこまで強く出るのかどうかは判りませんが、今となってはそれを否定するすべもなく、行きがかり上ハードBREXITは簡単に決まってしまう可能性もあります。
EU高官側からまだ交渉の可能性があるといった比較的温情的な発言も飛び出しており、そのたびにポンドは大きく買い戻されてはいますが、交渉決裂という最悪の結末が回避されるめどはまったく立っておらず、勢いでそういう結論に達する危険性は想像以上に高そうです。
合意なきBREXIT確定ならばポンド円で20円下落も
ここからはあくまで想像の世界になりますが、もしハードBREXITが正式決定というニュースのヘッドラインが走った場合、2016年の国民投票の結果後の暴落に準ずる相場の下落は覚悟しなくてはならなさそうで、ポンド円でいえば価格137円前後から簡単に20円程度は下落する最悪の事態を意識する必要がありそうです。
この手の暴落の場合、これまでの抵抗ラインで相場が止まるかどうかは暴落してみなくては判らないのが実情で、とかくオーバーシュート気味に展開しますから、上述の二つの期日である9月末から10月15日にかけては十分に気を付ける必要がありそうです。
2016年の暴落相場を思い返しますとポンド以外にもクロス円、ドル円などで強烈な下落が示現していますから、相場の暴落は決してポンドだけに限らない広範なものになることを覚悟する必要があります。
相場はショート満載でいきなりのショートカバーにも注意
相場ではポンドの大幅下落をかなり織り込みはじめており、ポンドはあらゆる通貨ペアでショートが溜まり過ぎています。
したがって、ちょっとでも楽観的な報道がでるたびに驚くほど買い戻しがかかり、ショートカバーも日ましに大きくなっている点が気になるところです。
最終的に大幅下落になるとしてもポジションの傾きがあまりに激しくなりすぎる思ったように下落しない、下値でもスプレッドが広がり過ぎて約定しない、逆に猛烈なショートカバーがでて結局損失を被るといった想定外の事態に巻き込まれることも意識しておく必要がありそうです。
いずれにしても旧キャメロン政権が国民投票を選挙公約にしてからすでに8年近い月日が流れ、幾度も政権が交代して最後に責任をもつはずのボリスジョンソンをしてこの状況ですから、ここから多少交渉期間を延ばしたところでハードBREXITはもはや避けられないというかなり冷めた見方も市場では広がり始めています。
なんとか穏便に解決がつくことを願いたいところですが、最悪の事態も十分に起こりうることはしっかり認識しておくことが重要です。