米国大統領選挙まであと3週間あまりとなり先行き不安定感は免れない状況ですが、ここへきてNASDAQがまた上昇をはじめており今年8月の史上最高値を窺う動きが加速しています。

ウォール街のマネージャー筋は、どちらの大統領候補が勝利してもとにかくコロナが収束しない限りは政府とFRBがさらに大規模な財政政策と緩和政策を打ち出してくるので、株価はまだ上昇軌道に乗ると判断しているようで、現物株の買いはまだまったく引かない状況になっています。

Data Tradingview

また、8月末にコールオプション大量購入で話題になったソフトバンクグループ傘下の投資会社が、またNASDAQの特定銘柄に対してプットとコールを組み合わせたオプションの大量買いを仕掛けているという話しもあり、コールオプションを売っている金融機関はヘッジのためにまた個別銘柄を買い向かう必要に駆られているという話しもではじめています。

確かに大統領選挙後には大幅に株式相場が上昇することから強気に出ている投資家が多いのだろうと思いますが、その一方で一部のヘッジランド勢は延々とNASDAQの先物を売っており引く気配を見せない状況です。

Data ZeroHedge

実はこの先物のショートが買い戻されることになれば、それこそ株価はさらに上昇することになりかねないことから、かなり危険なディールなのではないかという見方も広がっていますが、流石にここからさらに史上最高値を狙う動きになるのかどうか懐疑的な見方も広がりつつあります。

すでにドットコムバブルを超える株高

Data ZeroHedge

上のチャートは株価が収益の何倍で取引されているのかをみたPEマルチプルと呼ばれる指標です。

一部のNASDAQ銘柄を含むS&P500銘柄で見ますと、その数字は既に2000年のITバブルのころを超えて27倍強となっており、いかに株価がここから上昇を狙うとしても企業収益が全くついてきていないことがよくわかります。

GAFAMを中心とした特定銘柄への買い集中とパッシブ運用によるインデックス買い、さらにロビンフッダーを中心とした個人投資家のゲーム感覚の買いがこうした状況を示現しているのであろうと思いますが、なにかのきっかけでこれがすべて巻き戻されることになればとてつもない相場の下落を引き起こすことは間違いなく、もともと売りを得意とするヘッジファンド勢もそれを狙っているのではないかと思われる節がかなり強くなりつつあります。

果たして相場の見立てはどちらが正しいのかは、ここからの動きを見ていればじきにわかることなのかもしれませんが、買い向かう向きも売り向かう向きもいよいよ正念場が近づきつつあることを強く感じさせられます。

突然の株価の崩れは為替にも甚大な影響

米株の上昇は完全にGAFAMと呼ばれるGoogle(Alphabet),アマゾン、フェイスブック、アップル、マイクロソフトの5銘柄がS&P500の全体の時価総額の2割以上を占めることで猛烈な指数の上昇を示現しているだけで、この5銘柄が崩れだせばトランプ政権が継続してもバイデン政権が誕生してもとんでもないことになるのは間違いない状況です。

すでにこのコラムでもご紹介していますように、巨大IT企業の規制強化や解体案が進んだ場合いきなり株価大幅下落に見舞われる可能性は高く、果たしてバイデン政権が誕生した場合こうしたIT企業の生き残りができるのかどうかがかなり大きな問題になりそうです。

また、11月3日の選挙結果で大統領がすぐに決定しなかった場合には株価が決定に至るまでそれなりに下がるリスクも高まっており、もし司法判断で最終的に連邦最高裁判所での決定までもめるようであれば、その間の相場の変動が非常に気になる状況に陥りそうです。

民主党は裁判闘争に備えすでに300名以上の弁護士を集めていると言われていますから、通常の選挙年のように大統領決定ですんなり年末に向けて米株が上昇、ドル円もその余勢を買って上昇という動きにならないリスクのほうも意識しておく必要がでてきているようです。

いずれにしても相場の見立ては立場が異なるとかなり違っているようで、最終的にどちらに勝敗が下ることになるのかはこの秋の大きな注目点になりそうです。