トルコと同盟国であるはずのフランスの関係が急激に悪化しています。
これまでも地中海の天然ガスの採掘を巡ってはEUとかなり険悪な状況が続きましたが、中でもフランスとの関係は最悪の状況でフランスのエマニュエル・マクロン大統領がイスラム教徒に対するヘイト運動をしているとエルドアン大統領は主張しており、24日にはマクロン大統領は精神的な治療が必要だとも発言して、双方の関係は最悪のところにさしかかっています。
フランスではイスラム過激思想を持つ男に教師がクビを切られて殺害されるというショッキングな事件などがあり、一部のモスクの閉鎖やイスラム教関連団体の解散が命じられていますが、イスラム過激派との対決姿勢を強めるマクロン大統領にエルドアンが徹底的に噛みつく形で、26日には国民にフランス製商品の不買を呼びかけるなどきわめて感情的な対立が強まっています。
今のところ周辺のイスラム諸国がトルコに同調するような動きを見せているというニュースは入ってきませんが、すでに戦争寸前の状況になっていることに金融市場が嫌気するのは当たり前で、トルコリラは対ドルでも対円でも史上最安値を更新中です。
もはやスワップとりで買い向かうような通貨ではない
トルコリラはこうした事態を受けて対ドルでも対円でも売りが加速しており、本邦投資家がスワップ狙いで買い向かうトルコリラ円についてはすでに13円を割り込み、さらに下値を模索する動きが続いています。
もともと日足のチャートでみても完全に売りトレンドが延々と続いているわけで、本来買い向かうような通貨ではなく、自国民ですらトルコリラは買わない中で何故本邦の個人投資家だけが下がるとナンピンの形で買い向かわなくてはならないのかは、市場ではまったく理解されていないのが現状です。
とくにトルコリラ円についてはほとんど実需が存在しておらず、対ドルで下げ始めれば同じように対円でも下落する動きになっていますので、かなり危険な状況です。
海外の投機筋は本邦の個人投資家が大量に買い向かい保有し続けているのをよく知っていますから、無理やりストップロスをつけに来るような動きがここからさらに出てもなんらおかしな状況になっています。
海外FXではなんとかドルトルコリラの設定をしている業者も見受けられますが、トルコリラ円の取引は世界広しといえども日本の個人投資家だけのマニアックな通貨ペアであり、ポジションはほぼ全部ロングという特殊な状況だけにひとたび相場が崩れだすとフラッシュクラッシュのような大暴落が起きやすく、とにかく相当な注意が必要になりはじめています。
フランス、EUとトルコがどのような決着をつけるのかにも注目
ここ数日のエルドアン発言はフランスを逆なでするものとなっており、南欧各国もトルコとの関係がぎくしゃくし始めています。
トルコはロシアから仕入れたミサイルをNATOのレーダー網を使って実験的に発射ししかも失敗に終わるなど、EU全体との関係が決定的亀裂に至りかねないところにあります。
ただ、地続きのトルコはEUにとっては非常に重要な場所にあり、扱いを間違うと難民が欧州圏に押し寄せてくるなど想定外のリスクにつながる可能性があるだけに、単純に国交を切るといったドラスティックな決断もできないのが実情です。
為替市場はとにかく地政学リスクだけでも回避したいわけで、トルコリラの価格水準が底とは言い切れず、さらに下落が加速することも覚悟せざるを得ない時間帯に突入しています。
トルコの物価上昇水準からいえば、本来は10月のトルコ中銀の政策決定会合でさらに利上げが望まれていたわけで、それもかなわない状況に相場が嫌気しちるのは間違いなさそうで、ここからのトルコリラの動きには厳重な注意が必要になってきているようです。