Photo 朝日新聞 https://www.asahi.com/articles/photo/AS20200917000877.html

日本経済新聞が12月20日の紙面で報じたところによりますと、菅首相は米国でバイデン政権が誕生したことを受けて財務官僚に対してドル円が100円を割らないように頼むと、具体的にその水準を示してドル円レートの維持を要請したことがわかりました。

つまり平たく言えば、この水準を割ったら介入せよということを示唆し、本当に100円レベルで日銀が介入を行うことができるのかどうかが市場の大きな関心を集めることになりはじめています。

日本は民主党政権時代の2010年や東日本大震災後の2011年に一時的に過度な円高が進んだことを受けて、市場に介入を行っていますがあくまで相場を安定させるのが目的で、水準をそれ以上下げないといった意味で介入したわけではありません。

また、こうした介入に当たっては通常事前に米国の当局に打診し了解を得て介入していると言われており、今回のようにほとんど米国新政権との協調体制が整っていないなかで、100円という比較的高い水準での介入を首相が口にしたのはかなり異例の状況といえます。

過去の介入水準は70円~80円台

上述のように日本は2010年代の早い時期に何度となく為替介入を行っていますが、その介入レベルは100円よりはるかに下の70円台、80円台であり、103円台からみれば目と鼻の先の100円レベルで介入などできるのかという大きな疑問がよぎることになります。

恐らく口先介入やGPIFなどを利用したPKO軍団の買い支えにより相場を下げさせないという動きはできるかも知れません。

しかし、実弾の為替介入とは違いますから需給のバランスで100円を下回ることは十分に想定できるわけで、この要請を受けた財務官僚はどのようにして菅首相に説明をしたのか、あるいは簡単にコミットしてしまったのかどうかが気になります。

例年本邦市場が年末年始の休みに入る時期には、仕掛け的な売買からドル円が大きく下落を余儀なくされることも多くなりますが、フラッシュクラッシュのような事態が起きた時に、100円レベルで本当に当局が単独介入を決意することになるのかどいうかはかなり注目をあつめそうで、むしろ投機筋が挑戦的に100円割れをためしに来る可能性すらありそうな状況です。

米国民主党政権と本邦・自民党政権は極めて相性の悪い関係

過去30年近い米国の大統領選挙を見てみますと、1993年にクリントン政権が誕生した時も2008年にオバマが勝利したときも、その後の国内の総選挙では自民党が大敗を喫して与党から野党に下野するということが続きました。

これは単なる偶然という人も多いわけで、実際クリントン政権は当時日本に対しては相当冷たくかつ強硬な姿勢をつらぬいた経緯があり、当然円高も酷く進む状況となりました。

オバマ政権でも円高が大きく進んでいますので、民主党政権下ではドル円は円高になりやすいというアノマリーが存在も存在するだけに、バイデン政権となんのコンタクトも親和性もない菅政権が事前調整のないままに100円レベルのドル円で単独の為替介入をすることが本当に許容されることになるのかが注目されるところです。

ちょうどその時、米国の連邦債務は過去最高の28兆ドルレベルまで膨れ上がっており、その金額は新型コロナ対策でさらに大きくなろうとしています。

過去の例から言えば、米国がドル安を志向してくるのは間違いなさそうで、日本サイトの円安志向とどのような調整がはかられることになるのか、市場はその結果を見守ることになりそうです。

菅首相はこのあたりの事情を本当によく理解しているのかどうかも問題になりそうな状況です。