EU議会の承認期限をとうの昔に超えたことから絶望的、合意なき離脱必至とみられた英国とFTA交渉ですが、ぎりぎりの段階の24日に奇跡的に合意を見ることとなりました。
これにより2021年1月1日から英国とEU間の人、物、サービスの自由な移動はできないことになります。
英国はこれまでのEU単一市場から完全に離脱し、今後はあらゆるものの移動には通関手続きが必要になり、関税ゼロは確保できても手間はそれなりにかかることになります。
ただし航空、鉄道、陸路、海上交通はこれまでどおりを維持することになり、利便性の低下にはならずに済むようです。
焦点だった英海域でのEU漁船の漁業権問題は、英国が土壇場で譲歩しすぎという指摘も英国内には広がったようで、市場規模的には大した事はないものであることから譲歩は仕方なかったともいえそうです。
この協定は銀行業など英経済の80%を占めるサービス業は対象外で、英国を拠点とする銀行や保険会社、資産運用会社のEU市場へのアクセスは良くても部分的なものになる見通しであることは当然懸念事項として残ります。
EUの欧州委員会は、本来EU首脳会議までにこの締結を間に合わせる予定でしたがそれをオーバーランしたことから、加盟各国に欧州議会の同意なしに合意を発効させる暫定適用を提案する方針で、加盟各国は25日にも議論し暫定的に発効した後、欧州議会は1~2月に協定案を審議し同意すれば正式な発効ということになるようです。
最初から年末ぎりぎりまで交渉は可能であったことが感じられます。
真偽のほどは不明ですが、もしかするとボリスジョンソンはあえてこのクリスマス時期の締結を狙ったのかもしれません。
問題はここからのポンドの動き
昨晩の段階でのポンドは一旦Sell the Factといった動きで各通貨に対して下落していますが、ここからさらにこの条約締結を好感して上昇できるのかどうかが大きなポイントになりそうです。
英国からEUの各国への金融市場でのアクセス権がほとんど失われることから、英国に拠点をおく金融機関がドイツやフランスに移転することをすでに決めており、これにともなってポンドからユーロへの資金の移行もここからかなり激しいものになりそうで、まずはこの年末のリバランスの動きに注目していきたいところです。
ユーロポンドは実需面で非常に大きな資金が移動することになりますので、ユーロがポンドに対して上昇するかどうかが大きな注目点となります。
市場では合意なきBREXITを回避したことでポンドの買い戻しが強まっていますが、本質的な英国経済への影響はまだまだこれからで、それほど手放しで喜べる状況ではない点には相当注意が必要になりそうです。
クリスマスを経ると欧米の市場は事実上新年相場となり、12月最終週は株式市場も為替市場もそれなりのリバランスが発生することが予想されるため通常の動きとは異なる展開も示現することになりそうです。
4年半越しで続いてきたBREXITの問題が一旦終止符を打ったことで、為替市場でのこのテーマは払しょくされることになり、もとから基調としてあったドル安がまた相場を席捲してくることになるのかどうかにも注目が集まるところです。
いずれにしても決定的破局が襲ってくるのではないかとされたBREXIT問題が意外な形で終焉したことは驚きで、年明け以降新しいテーマで市場がこれまでとは全く異なる動きをしていく可能性も十分に注意していきたいところです。
はからずも相場は年度替わりで新しい局面を迎えようとしているようです。