米国ではようやくトランプが追加経済対策の法案にサインしたことから、年末中に給付金の支給が実施されることとなりました。

この法案には、春から夏にかけて国民が受け取った現金給付による家計支援の第2弾が含まれておりその費用は1660億ドルとなりますが、総額で9000億ドルも使うわりには関係ないことへの出費が非常に増えており、トランプ大統領が修正を要求したのも納得できる妙な対策となっているのが気になるところです。

ともあれ、今回は国民の大人1人につき600ドル、扶養家族1人につき600ドルがそれぞれ給付されることが決定しています。

第1弾では大人1人1200ドル、扶養家族1人500ドルだったことを考えますと見劣りするのは間違いありませんが、この支給が今年ロビンフッドなどの取引無料アプリを使った個人投資家の米株投資行動につながっただけに、さらに米株への個人投資家の参入が促進されることも期待されています。

この給付金は2019年の所得に基づいて年収(調整済み)が個人で7万5000ドル、夫婦合算で15万ドルを上回ると給付額は段階的に減額される形で、ミレニアル世代のような若い層は満額が支給されるだけに株式相場への影響が気になるところです。

失業者は連邦政府による週300ドルの追加支給の対象となり、3月に導入された救済策と同様にギグワーカーなど従来は対象外とされていた労働者も失業給付金の対象となることも注目されます。

この措置は3月14日まで利用できることから、年明けにこうした措置が株式相場にどのような影響を与えるのかに市場関係者の関心が集まりつつあるようです。

また、トランプからの注文を受けて1個人あたり2000ドルの小切手を支給する話も議会では継続されている模様で、これが決定すればさらに株式市場にとってはプラスに働く可能性もでてきている状況です。

コロナ禍でも史上最高値を付けた米株市場の異常な活況

今年、急激に利用者が拡大した手数料無料の株式売買アプリですが、その中心的存在となるロビンフッドはついに1500万アカウントが開設され、一人あたり平均600ドルと少額でありながらなんと日本円にして9300億円もの個人投資家市場を作りだしてしまったので、これまでと株式市場が変化したのは当たり前で、短期間に売買を繰り返すその投資家たちの手法も既存の個人投資家のそれとは大きく変わるものとなりました。

NASDAQなどのハイテク関連の人気銘柄への集中的な投資やテスラへの資金の集中などもロビンフッダーのなせる業という部分が大きいようで、結果として米株市場は実態経済が新型コロナ禍でぼろぼろになりながらも3月の大暴落以降急激に相場を回復させ、景気とはなんの関係もないままに株価は上昇し、上述の追加経済対策の実施決定を好感してさらに年末であるにもかかわらず史上最高値更新が続いています。

今回の給付金の多くが株式市場に再投入されることになれば、ざっと90億ドル程度があらたにバイイングバワーとして機能することも考えられることから、市場の期待が高まるのも判らない話ではありません。

2022年まではこの状況が続くと楽観視する向きも現れる始末

ウォール街では来年1月5日のジョージア州の上院議員選挙の決選投票次第では大統領、上下両院がすべて民主党というトリプルブルーの状況が示現する可能性もあるとして、完全民主党政権になれば大きな政府実施から当面は財政のバラまきにFRBのサポートも加わって当面株価は上昇軌道に乗るとみている向きも多く、年明け以降も株高は続いてしまいそうな気配が強まっています。

しかし、2016年末トランプ政権誕生まで絶好調を持続した米株相場もその年明け早々政権の就任を待たずに一度大きく値を下げる動きをみせており、非常に好調に見える相場も楽観視しているといきなり反転下落する可能性が出てくる点には相当な注意が必要になりそうです。

年明け早々はそれまでと相場のセンチメントががらりと変わることもよくあることでこのまま楽観視するのではなく、年明けの動向を確認してからエントリーするといった用心深さも必要になりそうです。