バイデン政権がいよいよスタートし初日から様々な大統領令に署名することで、トランプ政権の政策が次々と巻き戻りを食らう動きとなっています。
イエレン新財務長官はどちらかと言えば、これまでのトランプ政権のドル安姿勢を進める政策に対してドル相場の水準は市場の原理に任せるとしており、それがドル高姿勢に繋がるのではないかという見方も出始めています。
本当にそのような動きになるのかはここからの政権の政策次第ということになり、この12年オバマ政権からトランプ政権の4年の為替相場の動きを改めて確認してみますと、政権が交代することで相場状況は相当異なるものになることを改めて理解することができます。
トランプ政権のドル円値幅はオバマ政権時代のたった3割強
オバマ政権時代とトランプ政権時代のドル円の上下値幅を比較してみますと、明らかな違いがあることがわかります。
オバマ政権はリーマンショック後の2009年からスタートし2017年1月にトランプ政権へと移行していますから、都合8年の期間ということになり、それなりに相場にも変動が現れていたことが今更ながらにわかります。
当初ドル高から円高方向に大きく下落したドル円は、その後政権後半にかけて安倍政権のスタートで大きく上昇することとなり、政権末期トランプの出現で一旦はさらに下落し、トランプ当選確実で結果2016年末から2017年年初に向けて17円ほど上昇するという結構激しい動きになりました。
上下の値幅としては50円ほどになり、上下動を全て足しますと90円程度の振幅があったことがわかります。
一方トランプ政権の4年間は、当選時に大きく上昇したドル円が4年かけて延々とドル安円高方向に動いたことが改めてわかる状況で、その値幅は17円、オバマ政権の3割強の値幅の動きしかなかったことになります。
日米両国ともにゼロ金利による金融緩和を進めてきたわけで、金利差で相場が動かなくなりトランプ政権では酷く上下の振幅が抑制されてしまったことになり、政権が交代すると同じ通貨ペアでもかなり状況が変わることを改めて認識させられる次第です。
ユーロドルでも同様の状況に
一方世界の主力通貨ペアであるユーロドルでも同様で、オバマ政権下の8年間ではほぼ6650PIPSほどの値幅を示現したものの、トランプ政権下ではちょうど3分の1にあたる2200PIPS程度しか動かなかったことがわかります。
こちらも8年という期間と4年一期という期間の長さの違いがあり一概には比較できないものがありますが、それでも値動きはトランプ政権に入ってかなり限定的であったことが確認できます。
オバマ政権下ではBREXITの投票があったりと大きな変化が欧州圏に訪れたことも値幅を増幅される要素になったことと思われますが、それ以外ではやはり政策の違いが相場に表れていることを物語っています。
ドル円相場の歴史は政治的な動きの歴史
過去40年以上のドル円相場の推移を見てみますと、この通貨ペアはまさに政治的にその水準が決められてきたあからさまな政治的通貨であることを強く感じさせられます。
1985年のプラザ合意以降ドル円は、政治的にドル安円高が進み米国の赤字減らしに寄与することとなりました。
その後もドル円は円高に進むことが多く、アベノミクスが始まった2013年からようやく円安方向に国策的に動いてきた経緯があり、それでも対ドルでは125円を超えないことが政治的なお約束になっていたようで、ドル円は依然としてドル安円高方向へじりじりと値を下げる動きになっています。
過去2回のクリントン、オバマ政権では円高がかなり進む局面も見られましたが、バイデン政権で同じような動きがでることになるのかどうかが非常に気になるところです。
米国が抱える莫大な連邦債務のことを考えればプラザ合意ではないですが、どうしてもドル安を志向する時間が示現しそうで、イエレンがドル高容認といっても政治的にそうは問屋が卸さない事態に陥ることも十分に意識しておく必要がありそうです。
ウォール街ではバイデン政権が一期で終了すると考えている市場関係者が非常に多いようで、政策が長く続かない可能性も高くなり、いずれにしてもここからの4年間はトランプ政権時代の相場の動きと大きく異なる動きを示現するリスクがあることを相当意識しておかなくてはなりません。
今までの延長戦上で相場を考えると大失敗する危険性があることは肝に銘じるべき時間帯のようです。
恐らく就任から100日を超える辺り、つまり春先に日本で桜が咲くころには明確な方向性の変化が現れることになるのではないでしょうか。