欧米ではまだ夏休みシーズンは続きますが、本邦ではお盆を過ぎるとかなりの企業が夏休みから平常営業へとシフトし、為替相場も日常に戻りやすくなります。
今年の本邦の夏休みシーズンは劇的な相場の変動こそ起きませんでしたが、8月第一週の米国雇用統計のNFPの結果が市場予想をはるかに超えるダブルスコアの結果となったこと、リセッション懸念が大幅交代しインフレだけが市場のテーマということからドル円が2円以上跳ね上がる動きを示現しました。
しかし、翌週10日に発表された米国の7月CPIが市場の事前予想を下回ったことから今度は一転してインフレピークアウトといった観測が高まることになり、ドル円はそれを受けて3円近い相場の下落に直面することとなりました。

Data Tradingview

極めて市場参加者の少ない中でこうしたドル下落の動きはその後トレンドとして定着することはなく、週明けに再度ドル円が上を試す展開になるのかに注目が集まります。
9月後半まで米国のFOMCは開催されないので、日米の金利差はこのまま継続することだけは間違いなく、米債金利がここから異常に下がらない限りドル円はかなり安定した推移となることが見込まれます。

ただし、足もとでは米債のイールドカーブに凄まじい逆イールドが発生しており、このままでは米国の金融機関も全く儲からない状況に陥ることから、FRBがなにか手立てを出してくることになるのかも大きな注目点になりそうです。

Data FT

週明けは8/17米7月小売売上高、米FOMC議事要旨(7月開催分)、8/18米8月フィラデルフィア連銀製造業景況指数などが発表される予定ですが、FRBの高官らは利上げ継続を口にしているため、市場が利上げ継続やむなしという判断に至った場合には債券金利が再度上昇することになり、ドル円もそれとの相関性を保って再度上値を試しに行く可能性を想定しておく必要がありそうです。

米系の投機筋が日銀に対して挑戦的に日本国債を売りドル円を買い上げるという動きは一旦止んでいるため、ここからドル円が簡単に140円を上抜けていくと考えるのはさすがに判断が早いと思われます。
しかし130円台後半にまで再上昇する可能性は相当高く、それなりの振れ幅を伴いながら上昇していくことを考えるべき時間帯のようです。

相場の先行きに対する見立てが市場でばらつくというのはある意味健全な状況を示しているとも言えますが、それだけに決めつけや思い込みで取引すると手痛い失敗を余儀なくされることがありますので、8月後半相場も相当注意深い取引が重要です。

ユーロドルは引き続き下落を視野に入れたトレードを心がけるべき

Data Tradingview

ユーロドルが直面する経済的惨状とリセッションリスクについてはこのコラムでもすでに解説していますが、ユーロ圏経済はロシアからの天然ガス供給減少責めの影響をもろに食らって、全くいいところなしの状況に陥っています。
しかも9月になれば冬のエネルギー供給問題がさらに顕在化することになるため、どこかのタイミングでユーロドルが激しく下落することを想定しておく必要がありそうです。

ユーロドルは為替市場においてももっとも大きな割合をもつ通貨ペアの取引なので、実需次第でユーロ買いといった特別な動きが示現することもあると思われますが、ファンダメンタルズ的に米国を差し置いてここまで具合が悪くなると投機筋を含めてユーロ売りが進む状況に陥ることは否定できず、それがいつになるのかというタイミングの問題が大きな焦点になりそうです。
しかも今回パリティを下抜けた場合、それなりの下押しを示現することも覚悟しておくべき状況で、今年の冬に向けてユーロドルは為替の世界でもまさに冬の時代に突入することが危惧されます。

8月下落アノマリーが全くワークしない豪ドル、NZドルの不思議

過去20年あまり8月相場の風物詩的アノマリーとなってきたのが豪ドルやNZドルの8月における急激な下落ですが、残念ながら今年はこのシーズナルサイクルが全くワークしないまま月の半分を経過することになっており、毎回この動きで相場のご相伴に預かってきた投機筋も困惑を隠せない状況が続いています。
豪ドルは対円、対ドルでほぼ8月の下落確率は8割を超えており、NZドルも8月末には相当の下落となるのが毎年お決まりのパターンになっているだけに、今年に限ってここまで異なる動きをするのはなぜなのか誰にも分からず、月末までこの状態が続くのか、あるいは9月にずれ込むことになるのかが注目されるポイントとなっています。
アノマリーに賭ける取引はあまり感心しないものがありますが、確率的に8割を超えるとなると話は別となり、ここから月末まで全くこうした動きが出ないで終わるのか、何らかの兆候が現れるのかを注視していきたいところです。

夏休みを通過して為替相場ももとの動きに戻り始めている印象がありますが、今年は取り立てて例年の8月相場とは異なる動きを示現する通貨ペアが多いだけに、思い込みでトレードすることだけは避けたい状況が続きます。
週明けも十分に注意を怠らない売買が重要になりそうな一週間です。