今年もジャクソンホールでの会合のシーズンとなりました。
今年は8月25日から27日までワイオミング州ジャクソンホールにて開催されることとなり、コロナ禍で昨年までのオンライン会合ではなくリアルな会合に戻ることで注目を浴びています。

ここでパウエル議長が9月以降の利上げやインフレ対応についてどのような見解を示すのかが大きな注目点となり、市場はすでにかなり弱気な発言を繰り出すことを期待し始めています。
ただ、実際は会議をしてみないとわからない部分が多く、結果を受けて相場が荒れることも想定しておく必要がありそうです。

カンザスシティ連銀が開催する経済シンポジウムがジャクソンホール会合


このジャクソンホール会合は、米国の連邦準備銀行の一つであるカンザスシティー連邦準備銀行が開催する中欧銀行の年次総会のような性格をもっており、米国のみならず世界各国から中央銀行総裁や政治家、学者、エコノミストなどが出席することから世界的に注目を浴びるイベントとなっています。
1982年の開催当初は、当時のFRB議長だったボルカーが釣り好きでそれが実現できるようにこの地での開催を決定した、などの話が出回りました。
注目を集めるようになったのが2010年8月27日にバーナンキ議長が行った講演で、一旦は終了したはずの量的金融緩和を再開しQE2を示唆したためシンポジウムに出席していた当時の白川日銀総裁が予定を早めて帰国し日銀の政策決定会合の内容を変更した、ということから中央銀行の流れが変わる可能性を多くの金融アナリストが関心をもって見守るイベントとなったのです。

市場の注目はやはりパウエル議長のハト派的発言

2020年の会合にバーチャル出現したパウエル議長 Photo Bloomberg

日本は完全に蚊帳の外状態ですが、米国も欧州圏もUKも目下激しいインフレに襲われており、まさにインフレファイターとしての中央銀行に注目が集まりつつあります。
ただし今回のインフレが非常に悩ましいのは、同時にリセッションを引き起こす可能性が日々高まっていることからインフレ退治と経済成長という全く異なる2つの材料をこなしていかざるを得ない状況で、各国中銀とりわけFRBの対応が非常に注目されるようになっています。

市場のアナリストのシナリオによればパウエル議長がこのタイミングの講演でリセッションの可能性をあっさり認め、利上げは年内に収束、年明けからは逆に利下げを示唆する様な弱気発言を繰り出すのではないかといった見方が驚くほど強く出回り始めています。
バイデン政権は確かに支持率を大幅に下げる中にあって、中間選挙を前にインフレも終息させたいが経済減速も避けたいと思っているのは間違いなく、FRBがそれに応える形で利上げから一転緩和に乗り出すのではないかという異常な期待が高まっているというわけです。

ただ、本来8%を超えるようなインフレが示現している米国経済では最低限5%程度の利上げを行わないことにはFRBがターゲットとしている2%インフレへの回帰は絶対に実現しないと指摘する経済学者も多く、FRBはまずインフレ退治を優先させるのではないかといった別の見方も高まりつつあります。
とくにパウエルは共和党支持者であり、どれだけやってもバイデンに評価される位置にはいないので、インフレ退治にまい進してしまうという予測がここへきて高まりを見せています。

インフレは月次のCPIを見てそれが低下し始めたらピークアウトとするのはあまりにも雑な発想で、本来は2波、3波に渡って襲ってくるものを利上げでどこまで退治できるのかが大きなポイントになります。
FRBの場合今年の3月から利上げを始めてまだ3回あまり、金利も中央値が2.5%に到達しただけなので、ここで利上げを断念するようなことになればインフレは一層進み、それが起因のリセッションも進んでとんでもない結果を招きかねないリスクも高まることになります。
パウエルがこの会合の講演で9月以降の利上げやインフレ対応をさらに継続して実施することを示唆した場合、債券金利や米株、為替に大きな影響を与えることは間違いなく、8月最終週にむけて相場が大きく動くことにも注意しておく必要がありそうです。
ジャクソンホールは25日からの実施ですが週末を挟んでおり、週明け8月最終週に相場には影響が出るでしょう。