2月第二週、早朝から飛び出した日銀新総裁人事観測報道でドル円は大きく窓開けして上昇し、同日のNYタイムには米債金利が大きく上昇しはじめたことも追い風になり、なんと133円一歩手前まで上昇することとなりました。

テクニカル的には21日移動平均線も上抜けて完全に上昇軌道に復帰したかのように見えたドル円でしたが、岸田政権の首脳からは雨宮氏への日銀総裁打診を否定する発言が続き、就任内定を示唆する様な追加報道も出て来ませんでした。
そのため7日の東京タイムではすでに価格を維持できずに下落がはじまり、ロンドンタイムでも下落は継続、翌日午前1時のロンドンフィキシングではとうとう週初の窓開けを完全に埋める131円ぎりぎりのところまで下落を加速させることとなってしまいました。

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これだけならそうであろうと思えるような相場展開でしたが、さらに下落を加速させることになったのが8日日本時間午前3時前のパウエルFRB議長のエコノミック・クラブ・オブ・ワシントンDCのイベントでインタビューの内容でした。
2月のFOMC後の会見で口にしたディスインフレのプロセスが始まったことを再度持ち出し、さらに2023年はインフレが大幅に鈍化する年になる見通しであるとパウエルプットを強く望む向きを喜ばせるような発言を繰り出したことから米債金利は大きく低下、ドル円は131円台から即座にずり落ちて130.500円を割り込むところまで下落が進みました。
この時点でドル円の週明けからのロング勢のポジションは損切を余儀なくされたはずですが、パウエル議長は前週末の1月米雇用統計について「あれほど強いとは予想していなかった。インフレが2%に戻るまでに長い道のりがあることを明確に示した」とも発言したことから米債金利は一転上昇をしはじめ、ドル円も131円台まで値を回復してNYタイムを終えています。

パウエル議長としては別に作為的な発言をする意図はなく、単に先週のFOMC後の会見の発言をトレースしただけだったのかも知れませんが、日銀新総裁観測相場ではそのドル円上昇破壊威力は劇的、かつ刺激的ではからずもストップロスを誘発させることとなってしまい、さらに最終的に利上げ継続感が醸成されて債券金利は上昇、ドル円も再度上方向に動くという激しい相場状況を示現することとなりました。

日銀総裁人事だけでドル円が上昇を持続するのにはそもそも無理がある可能性

2月7日豪中銀は政策金利3.35%に引き上げを行っています。
この先の追加利上げは経済データ次第ということになっているようですが、周囲の主要国を見渡して見れば米国がすでに5%目前、UKが4%、EUが2.5%でこの先さらに利上げの可能性を示唆している状況です。
本邦もそれなりのインフレはすでに到来していますが、黒田日銀総裁は勇退を目前に控えても現状の緩和政策を堅持することしか方法はないと繰り返すばかりで、インフレに直面してもまともな対応をしないのは凄まじい物価高でも利下げをするエルドアンのトルコと日本ぐらいしか見当たりません。
日銀新総裁が黒田現総裁の政策を継続する可能性があるためドル円は円売りドル高を示現していますが、冷静に考えてみると誰が総裁になってもこの緩和政策を一体いつまで続けられるのかということが本質的な問題になりそうな状況です。

海外の多くのヘッジファンド勢は日銀がこのままYCCを維持するのはもはや無理と見ており、その一部は積極的にJGBを売って日銀アタックを再開しようとしているので、下手をすると黒田総裁の任期末4月8日まで持たず傷をつけない花道にするためには3月19日の副総裁任期切れに合わせて早めに辞任することになるのではといった話も聴こえてきています。
日銀新総裁人事報道でドル円が上昇してもその賞味期限は我々が考えているよりはるかに短いものになるリスクも予め想定しておく必要がありそうです。

FRB首脳のハト派発言でドルは即座に売られるがインフレ継続が見込まれると上昇と言う猫の目のような相場

先週のFOMCでは市場がパウエル発言に対しても都合のいい解釈を持ち出し、AI実装のアルゴリズムがすぐにそれに反応してドル円の売りを加速させる場面がみられました。
ただその半面インフレが継続しそうな経済指標が発表されると即座に買戻しが進むという状況が示現しはじめており、市場参加者全体がきわめて疑心暗鬼な状況下でトレードを行っていることが見えてくるところです。
日銀新総裁人事はまだこれからが本番で具体的な内定者がでればまたドル円は上昇する可能性がありますが、それがここから常態的なトレンド形成に寄与する可能性は相当低そうで常に相場に宗旨替えが起きるリスクは意識してトレードすべき時間帯のようです。

安易な思い込みだけでポジションをもってしまうととんでもない損失を食らう可能性がありますので、利益がでたら即座にリカクして回転を早めるといった工夫が必要になってきているようです。
2月に入って為替相場は思いのほか難しいところを推移しはじめています。